株主の関心は、内部統制から地震防災、停電対策、事業継続、危機管理に
多くの株主総会に参加した。これまで毎年同じ企業の株主総会に参加してきたが、今年は少し雰囲気が違った。株主が不安な顔をしているからだ。質問においては、内部統制の課題や個別の不祥事対応、経営方針の考え方などが主流であった過去の総会質問と異なり、日本が抱える共通の話題である、「地震」「原発問題」「停電」「食の安全」などに対する企業の安全対策への不安が質問となって噴出している。
株主は納得するまで質問をやめない!!
株主の不安は極度に達している。「本社や工場は震度いくつまで耐えられるのか?」「今ある本社は今後予想される地震の液状化現象で影響が出るのではないか?」「大丈夫というが、それはどのような科学的データで確証を得たのか?」「停電対策で発電機を購入し、大規模停電にも対応可能というが、発電機を動かす燃料はどのくらいの時間分確保しているのか?」「工場見学よりも工場の危機管理対策の方が大切なのではないか?」「原料の調達に際してどのような方法で食の安全を検証しているのか?」「食の安全に関して、社内のスタッフはどの程度知識を持っているのか?」など、質問は納得するまで続く。
政府の「予想外」の言葉は、株主の関心をリスク管理から危機管理へシフトさせた
国民がこれまで何度も聞かされ続けてきた「予想外」という言葉は、株主ひとり一人の記憶にも根付かせている。いくらリスク管理をしっかりしていると経営陣から説明されても、それでも回避できないことが起こると認知された。株主の多くが今関心を持つのは、そのような予想外の事態が発生した場合でも対応できる体制の準備と方針、経営者の心構えだ。「株主のご意見としてしっかりと承りました」とか「今後、ご意見を踏まえ、一層の経営強化に役立てて参ります」ではなかなか引っ込みがつかない。
連続質問で議長を追いつめる
今年の株主総会では一人の株主が何度も連続して質問し、議長を追い込むシーンが見受けられた。それらの多くが一般の株主で機関投資家ではない株主である。企業側は「一問一答」方式で質問を中断したところもあったが、それでも株主は不安を解消できていなかったのか、引き続き質問をやめなかった。質問をやめない株主は議長を追いつめ、さらに詳細な回答を行わせるべく、議長は他の担当役員へ回答を要請する。ここで目立ったのは、必要以上に多くの詳細情報を個々の役員が提供したことだ。そこで、さらに株主は新たな関心を抱き、質問は継続されるという事態となった。
質問は深く掘り下げる傾向に
これまで比較的広範囲に出されていた株主質問は、今年に限って言えば、広く浅くではなく、非常に限定されて深く掘り下げられていた。経営者の資質を問う質問や経営能力、さらに今後の経営ビジョンやCSRといった不変的関心は、今年の総会でも数多く質問があったが、3.11によって人生観が変わってしまった多くの国民が存在することは、今や疑うべきもない。今月末、株主総会は最もピークを向かえる。経営陣は株主の関心に対してしっかりと自信をもって回答することができるだろうか?
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