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コラム

ロサンゼルスの現場から。~日本語しかできなかったコピーライターが、気付いたら、LAでクリエイティブスタジオを設立していた話~

2020年は、最悪の年なのか。最高の年なのか。

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【前回コラム】「こんな時でも、こんな時だからこそ 僕らのモチベーションをあげてくれる広告たち」はこちら

こんにちは。これまで6回にわたって、ロサンゼルスからアメリカと日本における働き方の違い、最新クリエイティブの事例やブランディングをテーマに続けてきたこのシリーズも、今回が最終回となります。

前回のコラムのすぐ後に、こちらアメリカでは、白人警察官によるアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんの殺人事件をきっかけとした、人種差別に対する大規模な抗議デモと暴動が発生し、全米を巻き込んだ歴史的出来事となっています。(まだ全然パンデミックも収まってないのに!)

最後のコラムで、何を書いたら良いものか。非常に悩みましたが、まだ半分も終わっていないのにもかかわらず、何百年に1度の年になりつつあるこの2020年を振り返りながら、これからのことについて考えてみたいと思いました。

パンデミック。そして人種差別抗議運動

「今年は大統領選挙があるから、しばらくはみんな様子をみてるのかもね」。2020年頭に交わした同僚とのこの会話を覚えています。この時はまだ、当然パンデミックもオリンピックの延期もBLMの抗議デモや暴動も想像すらしておらず、例年に比べてクライアントや企業の初速が遅いことに少し違和感を覚えたくらいでした。

それからの数カ月の間に起こったパンデミックに関しては、前々回のコラムでまとめた通りです。ひとつ追加しておくと、日本やアジア諸国では落ち着きを見せ始めていますが、ここアメリカでは、今でも拡大し続けています。カリフォルニア州では毎日2000人ほどの新規感染者が確認されている状況です。それでも経済再開のため、徐々にお店はオープンし始め、人々が街に戻り始めてきたところです。その矢先に起こったのが、このジョージ・フロイドさんの事件でした。

アメリカのテキサス州ヒューストンで、ジョージ・フロイドさんが警官に首を膝で押さえつけられて死亡したことに抗議するデモに対し、警戒するミネアポリス市警。5月29日撮影。123RF

抗議デモを受け、携帯電話に毎晩届く夜間外出禁止令(筆者撮影)。

日本でもニュースで大きく取り上げられていると思うので、この事件の具体的な経緯は割愛します。ただひとつ述べておきたいのは、この事件とそのショッキングな映像が、大きな起爆剤となったことには、伏線がありました。この事件が起こった数週間前から警官や元警察官らによる、アフリカン・アメリカン市民らへの傷害事件が立て続けに起こっていました。そしてもちろん、建国以前から続く「Systemic Racism(制度的人種差別)」への抵抗や、今回の件に対して、大統領から発せられた言葉の数々(デモ隊を「悪党」と断じ、「略奪が始まれば銃撃も始まる」などをTwitterで投稿)が、前後の文脈にあることを理解する必要があります。

さらに、新型コロナウイルスのパンデミックによる被害(感染者・死亡者)やそれに伴う失業が、多くのアフリカン・アメリカンのコミュニティや人々に直撃したことが、今回の大きな抗議デモや暴動へとつながっていきました。その広がりは、140都市以上までに及び、5月31日には40都市以上が夜間の外出禁止令を出し、かつて差別撤廃に尽力したマーチン・ルーサー・キング牧師暗殺(1968年)以来の規模になったといわれています。

もし、あなたが「またアメリカは抗議デモで大変だな。差別問題、なかなかなくならないな」というように、これまでと同じようなものだと感じていたならば、それは間違いです。今私たちが直面しているのは、「私たちの問題」であり、「彼らの問題」ではありません。デモ行進の中で掲げられていたひとつのメッセージがそのことを象徴しています。そこには、こう書かれていました。

– It’s not White vs Black. It’s Everybody vs Racists. –

次ページ「I can’t breathe. 息ができない。」へ続く