新しさと古さが同居するメディアプランニング
メディアプランニングは広告ビジネスの根幹のひとつをなすものですが、「新しさ」と「古さ」が同居している領域でもあります。
「新しさ」とは広告ビジネスの発展は、メディアの発展や進化に左右されることから、メディア環境の変化が常にこの領域に新しい視野をもたらしてきたと言えるからです。また、いわゆる広告におけるサイエンスは、メディアプランニングから始まり、コンピュータのような情報テクノロジーの恩恵がもたらされたのもメディアプランニングの領域だったという側面もあります。
一方の「古さ」とは、メディア別に独自のビジネス慣習が残る領域であることが影響します。メディアを運営する企業によって広告に対する考え方は異なります。例えば、広告メディア事業を主要なビジネスとみなさないメディア企業(たとえば看板を所有する不動産主、鉄道会社など)との取引は特にその企業の文化が反映されたものになっていました。私が営業として広告会社に勤務していた時も、同じメディア部門でありながら、個々の媒体によってまったく担当者のカルチャーが違っていたのをよく覚えています。
ジョーンズの『広告が効くとき(1995年)』の広告業界背景
最近、私は新入社員時代(1990年代)に読んでいた広告の本を手に取る機会がありました。広告ビジネスにおいては、実際どの時代に属しているかによってかなり、そのスタイルは変わってきます。それは言うなれば当時、最もホットだったメディアが主導になるということ。インターネットが普及し始めるのは95年ですので、私が新入社員だった90年当時は、まだマスメディア、特にテレビが強かった時代です。一般的に80年代は広告ビジネスが世界的に成長した時期であり、日本はバブルに突入し「広告が文化である」という雰囲気を西武グループ(西武百貨店のために糸井重里氏が書いた有名なコピー「おいしい生活。」がそれを物語っています)がリードしていましたが、90年代になるとバブルが崩壊し、急速に停滞し始めたころです。
私は、広告会社に入社した当時はメディアプランニングについてはまったく素人でしたが、転職をきっかけにクリエイティブブリーフや戦略を学ぶようになってメディアプランナーとも話をするようになりました。当時、外資系広告会社のメディアプランナーは、日本の広告会社で言うところのマーケティング部門のように全般的な広告知識のあるタイプが多かったので、彼らとよく戦略の話をしたのを覚えています。
この頃のメディアプランニングについて話題となった書籍に、ジョン・フィリップ・ジョーンズ氏著の『広告が効くとき』があります。元JWTの調査・メディア部門出身のイギリス人が執筆した書籍を当時、東急エージェンシーのマーケティング部門が翻訳したものです。原著が出たのが95年、邦訳は97年ですが、帯からも当時のメディアプランナーにとっては話題の本だったようです。自分もぼんやりと記憶に残っており読んだような気がしますがよく覚えていません。もし読んだとしてもよくわからなかったのだと思います。
「マーケティング・ジャーニー ~ビジネスの成長のためにマーケターにイノベーションを~」バックナンバー
- 「タイパ」はどのように活用できるか?顧客の体験価値を高める5つのパフォーマンス(2022/11/16)
- 個人について知らなくても集団の動きは予測できる パーコレーション理論がデータ利活用に規制のある時代にマーケターに与えるヒント(2022/4/04)
- なぜ日本企業は累計3000億ドル以上、「スタチン」の売上を得られなかったのか? 「偽の失敗」を見極めてイノベーションを育む(2022/3/01)
- 日本企業からイノベーションが生まれないのは、「失敗が足りない」から?(2022/2/25)
- 「ノイズ」を避けるために、マーケターが持つべき「統計的思考」と「判断の構造化」(2022/2/18)
- マーケターが知るべき人間の判断にまつわる「ノイズ」と「無知」(2022/2/16)
- ヴァージル・アブロー風“デジタルの現実をここに”-CES2022に新たな解釈(2022/2/08)
- なぜ、シニアよりミレニアルが重視されるのか?-メディアと所得の年齢別「格差」(2021/10/06)
新着CM
-
販売促進
ファンタジー好きに訴求するグミ カンロ、空想の果実をイメージした新商品
-
AD
宣伝会議
【広報部対象】旭化成のグローバル社内イベント成功事例を紹介
-
販売促進
横須賀市、メタバースで観光誘致 AIアバターの実証も開始
-
コラム
サムライマックのCMに「ありがとう」と言いたい(遠山大輔)【前編】
-
クリエイティブ (コラム)
アイデアが苦し紛れにくっつく瞬間がある――「KINCHO」ラジオCM制作の裏側
-
AD
マーケティング
Marketing×Technologyの力をすべてのヒトに
-
販売促進
ベビー用品の速達デリバリー 日本トイザらス、30分以内におむつやミルクを配達
-
販売促進
「認知獲得」「販促」の両方使えるリテールメディア特性がメーカーの混乱を招く
-
AD
特集
OOHと生活者の交差点を考える