※本記事は、2022年8月1日発売の『販促会議』2022年9月号の転載記事です。
リテールAI研究会
宮田ひろ氏
経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を公表したのは2018年。「DX」がバズワードになりかけていたとき世界を呑み込んだコロナ禍は、店舗に人が来ないという極限状態をもたらしました。しかし、これをきっかけにDXを我がものとして真剣に取り組んできた小売業が、今少しずつその果実を実らせています。
店舗DXと聞くと、Amazon Goを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。実際、2018年1月に一般公開されたAmazon Goは衝撃でした。手に取って出ていくだけでお買い物が完結するスマートさはもちろん、レジがない、チェッカーがいらない店舗なんて運営側にとって夢のようです。
当社でもあれを⋯⋯と色めき立つ小売企業が見受けられますが、デジタルで実績を残したいけど情報システムには関心がなく、バックエンドはベンダー丸投げで、情報システム部に謎の請求書があふれる⋯⋯という「DXあるある」はぜひ回避していただきたいものです。
店舗システムの最新化とオペレーションの再定義
Amazon Goの裏側にはECによって磨きこまれた商品データベースに決済システム、強固なインフラ基盤と顧客理解の分析力といった、外からは見えないアマゾンのアセットがあります。ビジネスにはそれを支えるオペレーションがあり、オペレーションを支えるシステムがあります。顧客への価値提供は、最適化されたオペレーションとシステムがあってこそ成り立ちます。
クラウドコンピューティングやAIなど最新のテクノロジーは小売業の生産性を劇的に高める可能性があります。営業視点だけではなく、最新の技術動向を知りシステムから発想することも時には大切です。この数年の動きでは、チェーンストアにおける需要予測AIを用いた自動発注は小売業における生産性向上の取り組みの一例といえます。
保有店舗数が26店以上の企業では、すでに80%以上が自動発注システムの導入を行っており(2021年調査、2021年10月公表「スーパーマーケット年次統計調査」より)、その流れの中で、発注精度を高めるため需要予測AIの活用が広がりつつあります。テクノロジーの活用は、効率化と事業拡大の両軸で行っていく必要があります。
顧客接点の獲得と整備
また…
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