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米国小売に学ぶ、顧客との強固な繋がりの重要性

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近年稀に見るインフレが続く米国では、逆風の中、コロナ禍からの回復、そして更なる成長を画策する小売企業の挑戦が続いている。インテージ小野寺裕貴氏が米国生活者の意識変化と対応する小売企業の事例を紹介する。
小野寺裕貴氏

インテージ
事業開発本部
パネル事業推進部
ビジネス企画室 マネージャー
小野寺裕貴氏

本記事は販促会議2023年4月号からの転載記事です。
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今年1月に米国で開催された世界最大級の小売業界向け展示会“NRF Retail Big Show”で、NRF会長John Furner氏が2022年の米国小売を振り返り、「コロナによる影響からは改善が見られたものの、ウクライナ侵攻に伴う需要急増とここ数十年で稀に見るインフレが重なり、歴史的に困難な年だった」と語りました。

実際、街を見渡してもマスク着用者は皆無、飲食店でのワクチン接種証明書提示も無くなり、人々が日常を取り戻していることを感じました。他方、インフレについては深刻で、店を訪れると卵12個パックが5~7ドルと驚きの価格。コロナ禍からの回復、そして更なる成長を画策する小売企業にとっては逆風です。しかし、次のステージを目指す小売企業はこの状況を受け止めつつ、生活者の変化を捉えながら挑戦を続けています。

ここからは、米国生活者の意識変化に触れながら、その変化に対応する小売企業の事例を見ていきたいと思います。

共感を生むことの重要性

同展示会でMcKinsey & CompanyのSajal Kohli氏が提示した生活者の意識に関する調査結果が、小売企業の戦略を考える上で重要なものだと感じました。

● 75%の人が健康的でありたく、かつ39%の人は健康的な食事を意識している
● 31%の人が持続可能な食材の購買を増やしたいと思っている

パンデミックを経験し、健康意識が一層高まりました。加えて、自然災害や紛争が重なり、社会情勢への不安が増幅、少しでも社会や環境に貢献したいとの機運が高まっています。普段の消費行動においてもその価値観が反映されるのは当然で、企業は社会や環境に対する自社の姿勢を表明し、生活者から“共感”を得ることが重要になっています。Whole Food Marketはその好事例と言えます(図)。

各製品がどのような社会的価値を持つかを可視化し、伝わりやすいように工夫しているWhole Food Market。

店内には「We care about our community and the environment(コミュニティーと環境へ配慮する)」など自社のCore Valueが掲げられています。そして売り場に目を移すと、Core Valueに則った製品が並んでいます。

オーガニックなどの健康的で環境に優しい製品が多いのは勿論、至るところで“Local”のロゴを冠した製品を目にします。これは同一州内の企業や農家が生産した製品であることを意味しており、地域社会と連携した持続的な生産に注力していることがうかがえます。更に近年は、地元生産者へ教育や資金などを提供する“Local and Emerging Accelerator Program”を開始したり、売上の一部を農家の生活や教育に寄付する“Sourced For Good”ブランドを販売したりするなど、地域社会との関係を一層強化しています。

特筆すべきは、各製品がどのような社会的価値を持つかを可視化し、伝わりやすいように工夫していることです。その結果、生活者からの共感を得て、ロイヤルティの高い顧客を獲得しています。

米国はインフレが深刻で、生活者は経済的に厳しい状況です。だからこそ、製品の機能的価値に加え、社会や環境にとっての価値を考慮した上で、購買意思決定をしています。小売企業は、値下げや販促によって価格志向に応えることも重要ですが、それだけでは限界が訪れます。自社の考え、及び製品が持つ社会的価値を伝えながら、共感を生むことが必要です。

利便性を訴求し顧客を囲い込む

ここからは、購買・利用にあたっての“利便性”に触れていきます。米国をはじめとする先進国ではどこでも一定の利便性が担保されており、差別化を行う上では共感が鍵となります…

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