AI 橋田壽賀子企画 渡る世間は鬼ばかり 番外編』キービジュアル。
脚本のデータ化から始まる
今年5月に放送された『AI橋田壽賀子企画渡る世間は鬼ばかり番外編』は、2021年に亡くなった脚本家・橋田壽賀子氏の作風をAIで再現し、一本のドラマをつくりあげるプロジェクトだ。
橋田文化財団が企画し、プロジェクト内でAIの開発および活用を担ったのがABEJAだ。「AIプロジェクトは常にデータを準備するところから始まります。過去の脚本は紙でしか存在しなかったので、まずデジタル化するという非常に泥臭い作業から始めました」と、プロジェクトマネージャーを務めた阪口創氏は話す。
社内のデータサイエンティストと壁打ちしながら脚本をつくり、財団からフィードバックを受け、約半年かけて橋田氏の作風を再現した脚本を完成させた。並行して、ドラマ脚本制作のプロセスを一から学んだという。
「現役のプロデューサーである財団担当者から、世界観の策定、キャラクターのつくり方、プロット作成、シーン執筆という流れを教えていただきました。その一つひとつのプロセスにAIをどう活用するか考えていきました」。
同作ではメイド喫茶がひとつの舞台に。
橋田ドラマの本質「論理的誤謬」の発見
「多くの人がAIによる脚本制作と聞くと、シーンを自動生成するイメージを持つと思いますが、シーンを書くのは最後の工程。むしろそれ以前の、シーンを書くために必要な情報を整理することが重要でした」と阪口氏は強調する。
プロジェクトで最も困難だったのは、まず「橋田壽賀子らしさ」をAIに理解させること。「最初にLLMに『面白い渡鬼の脚本を書いて』と試しに指示したら、とても退屈なものが出てきました。当然といえば当然ですが、一般的なLLMは橋田先生らしさやドラマの“面白さ”を学習していないんです」(阪口氏)。
そうして橋田氏らしさ、『渡る世間は鬼ばかり』らしさを追求するために橋田文化財団との対話を重ねる中である発見があったという。「『渡鬼』といえば家族の口論や喧嘩がひとつの特徴としてありますが、ここで『論理的誤謬ごびゅう』という言葉に行き当たりました」と阪口氏は説明する。

