最強のAI推進チームは「3役」で完成する?─経営と現場をつなぐ翻訳機能

AI推進を若手ひとりに背負わせる体制では、ほぼ確実に失敗する。では、どうすれば機能するのか。メルカリでAI推進を担当するハヤカワ五味氏は、メルカリでの経験や他社事例を踏まえ、AI推進を成功に導くための「3つの役割」と組織設計の暫定解を提示する。鍵を握るのは、政治力、技術力、そして最も軽視されがちな“翻訳力”だ。AI推進の本質はツール導入ではなく、経営と現場の温度差を埋めるコミュニケーションにある。

前回、「AI推進担当に若手ひとりをアサインするのはやめてください」と強く言いました。じゃあ、どういう体制ならうまくいくの? 今回は、その具体的な組織設計の「暫定解」についてお話しします。

結論から言うと、AI推進は「3つの役割」が揃って初めて機能します。スーパーマンを1人探すのではなく、チームでこの3役を持てるようにするのが良いと思います。むしろ、この3役が揃わないままプロジェクトを始めても、9割方失敗して担当者が疲弊して辞めるだけじゃないかなあと思っています。

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AI推進に必要な「3つの役割」

私がメルカリでの経験や、他社の事例を見て感じているのは、以下の3役が必要だということです。

(1)政治担当
社内の「信頼貯金」を持っている人です。部長クラスや、社歴が長く各部署に顔が利く人が適任。彼らの仕事は、AIの知識ではありません。「誰に話をすれば企画が通るか」「どのタイミングで役員会にかけるべきか」といった社内政治と根回しです。技術的なことはわからなくても、「こいつが言うなら話を聞いてやるか」と思わせる力が必要です。私の知る限り、成功の裏には泥臭い調整をしている「オトナ」がいますね。私もそういうオトナになりたいと思って会社員をやっているところがあります。

(2)技術担当
「何ができて、何ができないか」を冷静に判断できる技術者です。プロンプトエンジニアリングだけでなく、セキュリティや既存システムとの連携、ナレッジをどのように集約していくかをデータベースなどの観点で判断できる人。私自身、技術的なバックグラウンドはそこまで深くないので、PM経験のあるシニアエンジニアとペアを組むことで、「技術的に無理なこと」を即座に判断してもらっていました。本当に助かった!

(3)社内広報担当
ここが一番軽視されがちですが、実は最重要です。社内の空気を読み、メッセージをデザインする人。「AIで業務効率化!」と無機質に叫ぶのではなく、現場の不安(仕事を奪われるんじゃないか、面倒が増えるんじゃないか等)を汲み取り、「これはあなたのキャリアを助けるものです」など、会社の文脈に合わせて必要なタイミングで必要なメッセージを、翻訳し伝える役割です。

多くの失敗プロジェクトは、(1)の政治力が足りずに予算がつかないか推進されないか、(3)の広報力が足りずに現場がシラけるかのどちらかです。(2)はわかりやすく必要とされやすいので、大体問題ない気がします。

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ハヤカワ五味の大企業AI推進奮闘記
ハヤカワ五味(メルカリ AI Strategy)

1995年、東京都生まれ。高校生の頃からアクセサリー類等の製作や販売を行い、多摩美術大学入学後にランジェリーブランド「feast」を立ち上げる。2019年からは生理から選択を考えるプロジェクト「ILLUMINATE」を立ち上げ、2022年にM&Aでユーグレナグループにジョイン。同年に「feast」をブルマーレに事業譲渡。2024年よりメルカリ入社。現在はAI Strategyとして同社のAIエージェント導入プロジェクトを牽引する。

ハヤカワ五味(メルカリ AI Strategy)

1995年、東京都生まれ。高校生の頃からアクセサリー類等の製作や販売を行い、多摩美術大学入学後にランジェリーブランド「feast」を立ち上げる。2019年からは生理から選択を考えるプロジェクト「ILLUMINATE」を立ち上げ、2022年にM&Aでユーグレナグループにジョイン。同年に「feast」をブルマーレに事業譲渡。2024年よりメルカリ入社。現在はAI Strategyとして同社のAIエージェント導入プロジェクトを牽引する。

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