今、多くのブランドが再評価しているのが「物理的な接点」である。その中でも、スマホの画面を越えてファンの手元に届く「ぬいぐるみ」というデバイスは、いかにしてブランドへのロイヤリティを形成するのか。連載「愛されぬいの履歴書」第2回は、日本初のハンバーガーチェーン「ドムドムハンバーガー」の広報大使「どむぞうくん」の履歴書を紐解く。
1年間の眠りを経て、一躍ヒーローに
コメダ珈琲店、100円ショップ「Seria」など、さまざまな企業・コンテンツとのコラボレーションが続々発表されている、ドムドムハンバーガーの「どむぞうくん」。4月1日からは浅草花やしきとのコラボイベントも開始するなど、今や幅広い層に愛されるキャラクターだが、その誕生は、決して順風満帆なものではなかった。
2020年、ブランド50周年を機に「ロゴのどむぞうをぬいぐるみにしたい!かわいいはず!」という広報担当者の思いから、たったひとりの制作プロジェクトがひそかに動き出した。フォルムを細かく調整し、ようやく理想のサンプルが完成。しかし、当時の社内の反応は冷ややかであった。
「そんなもの誰が欲しがるんだ」「ハンバーガー屋がゾウを売ってどうする」。そんな“北風”のような声を受け、夢はあえなく保留となる。どむぞうくんはその後1年間、担当者のデスクの片隅で「不採用の幻」として眠ることになった。
転機が訪れたのは2021年の夏だった。某大手雑貨店とのコラボレーションが決定した際、先方の担当者とライセンス管理会社がサンプルを手に取り「これこそが主役だ!」と熱烈に支持。発売後は即完売し、正式に「入社」を果たした。
「外部からの鋭い視点と熱い支持は、社内の空気を一変させました。お客さまの熱狂が可視化されると、北風は一瞬にして太陽に変わったんです」(担当者)。
ポップアップストアの様子。
黄金比と“真顔”が作る、愛着の余白
立体化に際しこだわったのは、「ロゴをそのまま立体にする」という難題だ。どこから見ても「どむぞうくん」だと認識できる黄金比を追求し、中綿をたっぷりと詰めて「むっちり」とした触り心地を実現した。なかでもポイントはその表情だ。
「表情はあえてシンプルに、何もしていません。基本は『真顔』です。お客さまがご自身で眉毛を貼ったりして独自の表情をもたせられるように、あえて隙をつくりました」。
UGCは“人格”を与えられるプロセス
ファンが店舗でぬいぐるみを並べてハンバーガーを撮影し、「今日はここで食べたぞう」とSNSにアップする。「ぬい撮り」とも呼ばれるこの行為は、もはや単なる写真投稿ではない。



