人間の真似をさせてばかりではもったいない 〜AIという新たな知性の可能性を探る〜

本コラムは、2025年10月に発売した書籍『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』に書ききれなかった話題、そして発刊から5カ月経って著者の並河進氏が新たに考えていることを、現在進行形で語ってもらう企画です。「続・AIネイティブマーケティング」として、ぜひ本書とあわせてお読みください。

昨年、カメラを買って、写真を撮るようになりました。しかもアナログの50年ほど前のフィルムシネマカメラのレンズをデジタルカメラに取り付けて撮影する、というマニアックな方法で、です。想定外の味が出る、不思議なボケが出るのが楽しくて、週末はカメラを首からぶら下げて、あちこち撮って回るようになりました。

フィルムシネマ撮影用レンズで撮影した写真

自分の写真をAIに真似させてみる

とはいえ、自分はなんでもAIとつなげなければ気が済まない、というわけで、最初に始めたのは、自分の撮影した写真を真似して(学習させて)、画像生成AIで画像を生成する、という方法です。

自分の写真を真似させて画像生成AIで生成した画像

これは、悪くない。確かに味がある。ちょっと構図が計算されすぎている気もして、わざとズラすようにプロンプトを工夫したり。

ただ、これを続けていると、少し虚しくなってきました。なぜなら、自分が感じている写真を撮ることの面白さは、いま、ここにしかない瞬間を撮れた、という一回性にあるからです。でも、AIにはそれはありません。いつでも何度でも生成できる。むしろ、時間の概念がない永遠性にAIの強みはある。

つまり、AIに、「一瞬の偶然」風な写真を生成させることは、これはAIのいいところである「永遠性」をつぶしてしまっているなあ、と。そんなことを思うようになりました。
(プロンプトテクニックとして学ぶことは多かったのですが!)

「つくる」と「捉える」

さらに写真を撮っていくと気づくことが出てきます。それは、目の前にあるモノやコトを自分がどう「捉えるか」というのは、AIではなく自分にしかできない、ということです。それは自分の心の中のことだからです。

一方、「つくる」という行為は、自分の外側に作用させる行為です。自分の外側で何かをつくるというのは、AIも得意。あっという間に膨大な量を生み出せます。

そもそも、「つくる」ということは、「つくる」だけでできているわけではありません。世界にあるいろんなことやいろんなものを「捉える」。そこから発想やエネルギーを得て、「つくる」。つまり、「捉える」と「つくる」の繰り返し。

そんなことは当たり前のようでいて、AIが大量にモノやコトを作り出す、その情報の大爆発の前では、じっくり「捉える」ことを忘れてしまいそうになります。だからカメラを構える時間は大切なのかも、とも思うようになりました。

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続・AIネイティブマーケティング
並河進(dentsu Japan チーフ・AI・オフィサー/エグゼクティブ・クリエイティブディレクター/主席AIマスター)

AIを活用したプロジェクトと、企業と社会を結ぶソーシャルプロジェクトが得意領域。2022年9月、電通クリエイティブインテリジェンス発足。東京大学AIセンターとの共同研究をスタート。Augmented Creativity Unitユニットリーダーをつとめる。著書に『Social Design』(木楽舎)、『Communication Shift』(羽鳥書店)他多数。読売広告大賞、広告電通賞など受賞多数。最新著作は2025年10月発売『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』(宣伝会議)。

並河進(dentsu Japan チーフ・AI・オフィサー/エグゼクティブ・クリエイティブディレクター/主席AIマスター)

AIを活用したプロジェクトと、企業と社会を結ぶソーシャルプロジェクトが得意領域。2022年9月、電通クリエイティブインテリジェンス発足。東京大学AIセンターとの共同研究をスタート。Augmented Creativity Unitユニットリーダーをつとめる。著書に『Social Design』(木楽舎)、『Communication Shift』(羽鳥書店)他多数。読売広告大賞、広告電通賞など受賞多数。最新著作は2025年10月発売『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』(宣伝会議)。

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