背景にあるのは、AI活用が「業務効率化ツールの導入」から、働き方、採用、評価、リソース配分そのものを再設計する段階へ移ったことだ。人員数や採用計画だけでなく、生成AIの利用量やトークン費用、AIエージェントが担う業務量まで含めて、組織の生産性を設計する必要が出てきている。
メルカリとSansan、相次ぐCHRO×CAIO
メルカリグループは2025年7月に「AI-Native Companyの実現」を宣言し、AIを組織とプロダクトの基盤として活用する方針を掲げてきた。その後、100人規模の「AI Task Force」を発足。プロダクト、業務プロセス、組織の各領域でAI活用を進め、AI化の可能性の可視化や重点領域の特定、AIガバナンスの基盤整備を完了したという。
同社によると、従業員のAI利用率は100%に到達し、エンジニア1人あたりの開発量は前年比1.9倍に向上した。個人レベルでのAI活用が浸透する一方で、今後は組織運営そのものをAI前提に変える段階に入るとしている。
これまでAI戦略と人事戦略は、それぞれ別の責任者が担っていた。今回、CTOとして「AI Task Force」をリードしてきた木村氏がCHROとCAIOを兼務することで、AI活用の推進と人事・組織制度の再設計を同一の責任者のもとで進める。なお、CTOについては7月1日に後任が就任予定。
同じく6月1日、Sansanは新たなCxOポジションとして「Chief AI Transformation Officer(CAXO)」を新設し、取締役/執行役員/CHROの大間祐太氏が就任したと発表した。CAXOはAIトランスフォーメーション(AX)戦略を全社横断で統括し、生産性向上にとどまらず、AIを前提とした組織カルチャーの構築や収益創造をけん引する役割だという。
Sansanは2025年に「AIファースト」を全社方針として発表。社内での生成AI活用率は、非エンジニアを含む全職種で99%に達したとしている。さらに2026年には、全社のAI活用を推進する「AI Enablement室」をCHRO直下に立ち上げた。今回、人事責任者がAI責任者を兼任する理由について、同社は「組織とビジネスの課題、双方を深く知る者がAXをリードすべき」という考えを示している。
メルカリは技術責任者が人事とAIを束ね、Sansanは人事責任者がAI変革を束ねる。出発点は異なるが、いずれもAI推進を情報システムや開発部門だけに閉じず、人と組織の設計に直結させる点では共通している。