「宣伝会議のこの本、どんな本」では、当社が刊行した書籍の内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」や識者による本の解説を掲載しています。今回は、6月1日に発売した『さよなら 統合報告書』(ウィルズ、パンハウス 著)から「はじめに」を公開します。
株式会社ウィルズ、株式会社パンハウス 著
定価:2,200円(本体2,000円+税)
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なんで今年も、統合報告書を出さなければいけないの?
統合報告書を発行する企業は、年々増え続けている。KPMGジャパンが2026年4月に公表した「日本の企業報告に関する実態調査2025」によると、2025年12月末時点で統合報告書を発行する企業は1,225社にのぼり、10年前の2015年(206社)から約6倍以上に増加している。
もともと統合報告書の目的は、外部環境が急速に変化し、将来が不透明な時代において、投資家がより長期的な視点で企業を評価するようになったことに対応するものであった。企業の価値を財務的成果だけで測るのではなく、「長期的な価値創造のストーリー」として可視化する試みだったのである。
しかし今、開示をめぐる環境は大きく変わりつつある。国内では有価証券報告書、招集通知、コーポレート・ガバナンスに関する報告書など、複数の制度開示媒体に重複情報が掲載されている状況だ。これらを整理し、企業の開示負担と投資家の情報入手コストの双方を軽減するため、関連省庁主導で、「ワンストップ·ワンレポート化」に向けた議論が進められている。
さらに、2025年4月からはプライム市場上場企業に対して「日英同時開示」が義務化された。有価証券報告書、決算短信、重要事実などの適時開示情報のうち、重要事実については英文同時開示が、それ以外についても「速やかな」開示が求められている。
また、2025年3月5日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が日本初の「サステナビリティ開示基準」を公表した。この新基準は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定する国際基準との整合性を意識して設計されており、日本国内の法定開示(有価証券報告書等)への段階的適用の方針が示されている。これにより、各種法定開示資料の統合と一貫化が進み、情報の網羅性は一層高まる見通しである。
とはいえ、こうした制度的整備が進んでも、企業の長期的な価値創造ストーリーをどう伝えるかという課題は依然として残る。むしろ、形式が整うほどに、“本質的な物語” を描くことの重要性が増しているとも言えるだろう。一方で、開示担当者の方々にとっては、依然として開示の負担が大きいという現実がある。社内調整や巻き込み、修正作業に追われ、「開示のための開示」となってしまい、統合報告書の本来の目的である「対話のツール」として機能していないケースも少なくない。
