コーポレートコミュニケーションの核心 PMVVの浸透と拡散

企業が自らの社会価値や経営目標を明確にし、内外に示す手段として「PMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)」を掲げる動きが広がっている。しかしながら、これらの取り組みは浸透こそが肝心だ。現場の社員が腹落ちし、行動に反映されなければ形骸化してしまう恐れがある。
 
コーポレートブランディングにおいて、今何が求められているのか。数多くの企業コミュニケーションを支援し、自らも大規模なミッション策定・浸透に取り組んできた、日経グループの総合広告会社・日本経済社の小澤聡氏に、本当に機能するパーパスブランディングの秘訣と、同社ならではの「伴走型支援」の強みを聞いた。

企業がいま、改めて「パーパス」を求める背景

日本経済社にパーパスブランディングやPMVVに関する相談が本格的に増え始めたのは、ここ5〜6年のことだという。背景にある企業の悩みは様々だが、特に切実なのは「従業員エンゲージメント向上」や「採用強化に資する若手社員からの評価向上」などだ。

「企業戦略の多角化や、人材の多様化の流れを受けて、自社のアイデンティティ(らしさ)を明確にし存在意義を言語化したいという要望や、新規事業立ち上げ、トップ交代、M&Aやグループ再編といった『企業の転換期』に足元を見つめ直したいというケースが多いです」と小澤氏は分析する。

日本経済社 コーポレートコミュニケーション戦略局 部長/パーパスブランディング・ストラテジスト 小澤聡 氏。コーポレートミッション浸透の取り組み「NICOMI」の一環で、ロゴをあしらったグッズやミッションを記載したティッシュボックスなどを作成した

日本経済社 コーポレートコミュニケーション戦略局 部長/パーパスブランディング・ストラテジスト 小澤聡 氏。手前はコーポレートミッション浸透の取り組み「NICOMI」の一環で作成した、ロゴをあしらったグッズやミッションを記載したティッシュボックスなど

クライアント企業の規模や業種も幅広い。大手企業から「親会社のパーパスに即した独自のPMVVを持ちたい」と相談されることもあれば、地方の有力企業から「確かな技術や事業があるのに、自分たちの存在意義を社内外に発揮しきれていない」という課題に対する解決を求められることもある。

「会社の規模や業種、上場・非上場を問わず、それぞれのフェーズに応じた課題が存在しています」と小澤氏。企業を取り巻く環境が激変する中で、自社の存在意義を明確にし、社内外へ浸透拡散する企業のコミュニケーション活動は、あらゆる企業にとって重要なテーマのひとつになっている。日本経済社では、これらの活動をコーポレートコミュニケーションとして、サポート強化を推進している。

自社の取り組みから実感を深めた「浸透」のリアル

日本経済社自身も、2023年に「信頼される伴走者となり、ビジネスに新たな可能性を拓く。」という自社の「らしさ」、存在意義を、新たなコーポレートミッションとして発表している。創立80周年や社屋移転、親会社である日本経済新聞社のパーパス策定のタイミングを受けて、1年前から社内で議論してきた。

「全社員参加のワークショップの後、社内の選抜メンバー29人で10回にわたって議論を重ねました。その際に本プロジェクト名のロゴ入りTシャツを作成して、全員で着用し気持ちを一つに議論してきたのです」と小澤氏は振り返る。

この自社での大規模なプロジェクト経験は、現在のクライアント提案における大きな強みとなっている。小澤氏自身が推進メンバーだったからこそ、リアルな「経験則」としてアドバイスできるのだ。

「最も実感したことは、パーパスは策定して終わりではなく、スタートに過ぎないということ。こうした取り組みを主導するご担当者の多くは即効性を求めがちですが、重要であり時間を要するのがその後の『浸透』です。当社も4年目を迎え、様々な施策を続けることで、ようやく全社に血肉化してきた実感があります」

ワークショップやランチミーティングなど対話の場を設けることで、社員の腹落ちを促す

ワークショップやランチミーティングなど対話の場を設けることで、社員の腹落ちを促す

具体的な浸透施策として、同社では毎年レベルを上げながら研修を実施している。初回は「認知・理解」、2回目は「共感・社員の挑戦」、3回目の今年は各部門の部長がファシリテーターとなり、「自分たちの日常業務においてミッションをどう実践するか」をディスカッションして腹落ちさせる取り組みを続けている。

ほかにも、ミッションが記載された卓上ツールの常設や、社員同士が昼食を取りながらフランクに語り合う「ミッション・ランチミーティング」、さらには売上貢献だけではなく、ミッション実践度を審査し、ロールモデルにふさわしいケースを表彰する「コーポレートミッション・アワード」を実施。こうした一連の取り組みを「NICOMI(Nikkeisha Corporate Missionの略)」というプロジェクト名を掲げて推進してきた。これらに加え、本社移転やフリーアドレス制の導入なども重なり、社内の空気は徐々に変わっていった。特に若手社員の離職率の低下といった目に見える成果も出てきたという。

2026年は「コーポレートコミュニケーション」の分水嶺

パーパスが社内に浸透することで、どのような経営効果が現れるのか。同社のオリジナル調査では、浸透施策を継続することで、段階的に様々な効果が広がっていくと見ている。初期は「会社の一体感」や「エンゲージメント向上」、「採用面でのミスマッチ解消」だ。さらに浸透が進むと、社員がパーパスを基準に「自発的」に働くようになるため、意思決定のスピードや業務効率が向上する。

日経社パーパスオリジナル調査より

日経社パーパスオリジナル調査より

そして、インナーブランディングの重要性はさらに高まっていくと小澤氏は指摘する。

「今年、コーポレートガバナンス・コードが改定される予定です。これまでのガバナンスの『枠組みづくり』から、『実質的な稼ぐ力』へと焦点が変わります。今後は『企業の持続的成長のために、どのように成長に投資しているか』具体的な公表と説明責任が求められます。その投資先として、人的資本は最重要課題です」

統合報告書などで「パーパスなどを軸にインナー(内部)へのブランディングを強め、人的資本の価値を最大化している」とロジカルに説明するためにも、パーパスをはじめとした企業の「らしさ」を社内外へ浸透拡散させることは、今後の経営戦略においてますます重要なテーマになっていく。

パーパスを核としたコーポレートコミュニケーション

日本経済社が提供するパーパスブランディング支援の強みは、単に「きれいな言葉をつくる」だけのコンサルティングにとどまらない点にある。パーパスをコーポレートコミュニケーションの核として捉え、策定・浸透・外部発信のトータルの活動で企業価値を高めていく。

よくある失敗は、トップダウンによる「ワードの一人歩き」や、つくった瞬間だけ盛り上がる「イベント化」だ。さらに、実際の企業活動が伴っていない「パーパスウォッシュ」や、策定したものの実践されない「額縁パーパス」といった課題も目立つ。これを防ぐため、同社ではまず「ありたい姿(To Be)」と「現在の姿(As Is)」のギャップを可視化する。日経グループの「企業イメージ調査」や、「エンゲージメント調査」から、企業の「現在地(As Is)」を特定していく。

コーポレートコミュニケーションのターゲットと構造。社内にある無形資産を「らしさ」として見える形に言語化していく

コーポレートコミュニケーションのターゲットと構造。社内にある無形資産を「らしさ」として見える形に言語化していく

組織や現場への落とし込みについては、独自の工夫がある。

「管理部門と営業部門では業務が異なるため、一つの言葉をそのまま渡されてもピンときません。そこで、社内の中堅クラスから『担当リーダー』を選び、彼らがハブとなって各部署の『日常業務(現業)』にまで言葉を翻訳して結びつける仕組みを提案しています」

また、社内(インナー)だけでなく、広告やPRによる外部(アウター)への発信も同時に行う。社外に発信することで、従業員の家族や知人、取引先などから「見たよ」と声をかけられる。そうした反応が社員のやる気に直結し、誇りやエンゲージメントにつながる「ミラー効果」を狙うためだ。

多くの担当者が「相談相手」を求めている現代において小澤氏は、日経グループとして提供できる支援領域の広さも強調する。

「日経グループには、初期のリサーチから、成長期のアウターコミュニケーション、成熟期のリブランディングまで、企業のライフサイクルに応じたリソースが揃っており、シームレスなサポートが可能です」

「私たちは、単なる手法の提供ではなく、企業の血液をうまく循環させるための仕組みを共に創り上げる『信頼される伴走者』であり続けたいと考えています」と結んだ。

お問い合わせ

株式会社 日本経済社
コーポレートコミュニケーション戦略局

お問い合わせ:https://www.nks.co.jp/inquiry/form-service_branding/
URL:https://www.nks.co.jp/

未来への出発点をともに考える日経社WEBマガジン
Think X(シンククロス)
URL:https://www.nks.co.jp/thinkx/


この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事