子育て支援を「実子」だけにしない ユニリーバとエレコムが実践、里親まで含めて広がる“次世代の子育てサポート”

多様な人材の獲得・定着が企業課題となる中、育児や介護など、従業員が直面するライフイベントを企業がどう支えるかが問われている。法定制度を整えるだけでなく、一人ひとりの事情に応じた働き方や福利厚生をどう設計するか。その対象は実子を育てる従業員だけに限らない。
 
こども家庭庁委託事業の一環として8月21日、第2回「企業における子育てサポート研究会」(受託事業者・朝日新聞社アカウントソリューション本部)が開催された。社会貢献と企業価値向上を両立させる「次世代の子育てサポート」をテーマに、こども家庭庁による里親制度の説明に加え、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスとエレコムが、子育て支援策について紹介した。

「子育て世帯だけ」を対象にしないユニリーバ

冒頭、こども家庭庁支援局家庭福祉課の石田有介課長補佐は、国内には親の病気や虐待、経済的事情などにより、親のもとで暮らせないこどもが約4万2000人いると説明。こうしたこどもを家庭に迎え入れて養育する里親の約半数は共働きだという。石田氏は、働きながら里親としてこどもを育てるためには「企業の協力も必要になる」とし、企業にも制度への理解を求めた。

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こども家庭庁 支援局家庭福祉課 課長補佐 石田有介 氏

続いて登壇したのは、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス コミュニケーションズアンドコポレートアフェアーズ ヘッドオブコミュニケーションの岩﨑有里子氏。同社の特徴は、育児中の社員だけを切り出すのではなく、社員一人ひとりが異なる事情を抱えていることを前提に制度を設計する考え方だ。

岩崎氏は「改めて考えると、ユニリーバには子育て世帯だけを対象にした制度はそれほど多くありません」と強調。全員に同じ環境を与える「平等」ではなく、それぞれの事情に応じた環境を整える「エクイティ」を重視していると説明した。

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ユニリーバでは一般的な「DE&I」ではなく、Equityを先頭に置いた「EDI(Equity, Diversity & Inclusion)」という呼称を用いている。

その考えは育児・介護関連の制度にも表れている。育児休業は里親や養子縁組も対象となり、2歳まで取得可能。最初の3週間は賃金を100%支給する。人事部門で里親による利用例はまだ確認していないものの、「必要になったときにカバーできる制度」になっているという。

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ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス コミュニケーションズアンドコポレートアフェアーズ ヘッドオブコミュニケーション 岩﨑有里子 氏

看護休暇や育児短時間勤務のほか、海外出張時には夜間・休日のベビーシッター費用や、親を呼び寄せるための交通費を支援する。保育園に入園できない場合の保育費用も会社が補助する。さらに、専門カウンセラーに24時間相談できるEAP(Employee Assistance Program)は、社員本人だけでなく同居するパートナーや家族も利用できる。

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働く場所や時間についても選択肢を広げている。2016年から運用する「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」では、対象社員が上司に申請すれば、理由を問わず働く場所や時間を選択できる。平日の5時から22時までの間で勤務時間や休憩時間を決められる仕組みだ。

導入のきっかけは、当時のトップが日本法人の働き方を見て、「なぜ皆が会社からなかなか出ないのか」「なぜ朝9時にエレベーターがこんなに混むのか」と疑問を持ったことだった。

岩崎氏は、制度があっても「知られていなかったり、使いづらかったりしては意味がない」と指摘。家庭の事情をマネージャーに話せない環境では利用につながらないため、心理的安全性を確保したリーダーシップや研修も重視するという。

エレコムは「里親」に特化した制度を新設

一方、特定の社会課題に焦点を当て、新たな制度をつくったのがエレコムだ。取締役執行役員で医師でもある葉田甲太氏が登壇し、『月刊総務』戦略総務研究所所長の豊田健一氏との対談形式で、同社の子育てサポートについて紹介した。

葉田氏が里親支援に取り組む原点となったのは、児童養護施設を訪れ、そこで暮らすこどもたちと接した経験だという。葉田氏は、社会課題を考える際には「N=1」、つまり実際に現場へ行き、当事者と話すことを重視していると説明した。

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エレコムが設けたのは「里親支援制度」。里親認定研修の受講開始時に一時金10万円、里親として認定された際には報奨金20万円を支給する。ほか、認定に必要な研修へ参加するための特別有給休暇を設け、里子を迎えた後は原則として実子と同様に育児休業などを利用できるようにした。

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エレコム 取締役執行役員 葉田甲太 氏

制度の中身は「思い」だけで決めたわけではない。社員を対象にアンケートを実施し、仮に里親になる場合に何が障壁になるかを尋ねたところ、「育休を取れない」が約5割、「収入が下がる」が約4割を占めた。

そこで、研修のための休暇や交通費を含め、里親になることで生じる経済的・時間的な負担を減らす制度を組み立てた。葉田氏は「『里親になるから偉いのでお金を出す』という発想ではない」と説明。「社会のために行動した結果、本人だけが経済的に損をする状態をなくしたい」とし、「マイナスをゼロにする」という考え方を示した。

「数百万円なら、やらない理由はない」

制度設計では、企業側の負担も計算した。葉田氏によると、エレコムグループは約3000人。制度を利用する社員を多くても数人から10人程度と想定すると、会社の負担は大きくても数百万円規模になるという。

葉田氏は「それなら、やらない理由はないと思いました。数百万円の負担でこどもたちを支えられるのであれば、企業として取り組む意味がある」と説明した。

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葉田氏は、制度を一部の企業だけが実現できる特別な取り組みにしないことも意識した。「意識の高い会社だけができる制度では社会は変わらない」とし、早稲田大学の上鹿渡和宏教授ら社会的養護の専門家、こども家庭庁、児童養護施設などとも連携。他社にも横展開できる現実的な制度を目指した。

制度をつくった後には、社内で知ってもらう取り組みにも力を入れた。上鹿渡教授を招いた社会的養護に関する社内セミナーには約700人が参加。現時点で制度を利用して里親になった社員はいないものの、研修への参加を検討している社員が1人いるという。葉田氏は、里親制度を知る社員の「分母」を増やすことが重要だとした。

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月刊総務 戦略総務研究所 所長 豊田健一 氏

企業として制度を導入する理由については、「ブランディング」と「ロイヤリティ」を挙げた。社会課題に取り組む会社の姿勢を見た社員から「この会社で働いていることがうれしくなった」と言われることがあるほか、退職を考えていた社員が同社の取り組みを見て「辞めるのをやめた」と話した例も紹介した。

「里親だけ手厚いのはどうなのか」との声も

制度を新設したことで、新たに見えてきた課題もあった。会場では参加者から、「実子の育児と仕事の両立に苦労している社員から『まず既存の育児支援を充実してほしい』という声が出るのではないか」と質問が上がった。

葉田氏は、エレコムでも「里親だけを手厚く支援するのはどうなのか」という反応が実際にあったと明かした。

写真 イベントの様子

里親支援制度の検討を進める中でも同様の議論があったという。同社は2025年11月、ひとり親家庭を支援する「ひとり親家庭サポート手当」を導入。その後、2026年3月には里親支援制度を発表した。

葉田氏は「里親支援制度に取り組んだからこそ、別の課題が見えた面もあります」と強調。一つの社会課題に向き合ったことで、従来の子育て支援を見直す動きにもつながったという。

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お問い合わせ

こども家庭庁・里親制度広報ウェブサイト「広げよう里親の輪」

URL:https://satooyanowa.cfa.go.jp/

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