夜の新宿を書店員が走る 「1冊でも多く届けたい」ノーベル文学賞発表の裏で奔走した書店の裏側

ノーベル文学賞の受賞者が10月8日に発表された。選ばれたのはカナダの詩人のアン・カーソン氏で、日本人や日本にゆかりのある人の受賞はならなかった。世界で一番、1人の作家に注目が集まる日、書店はどう動いたのかを追った。

店内 書店

東京・新宿の紀伊國屋書店新宿本店ではパブリックビューイングが開かれ、午後7時過ぎには会場は事前に申し込んだ15人のほか、当日来店した人、メディア各社でにぎわった。受賞が期待されていた村上春樹氏の本を手にしたファンたちはYouTubeで配信される発表の瞬間を食い入るように見つめ、午後8時、受賞者が日本人以外と発表されると、残念がったり「また来年」と期待の声を上げたりした。

高校1年生の時に村上氏の『1Q84』を読んで以来、熱心なハルキストだという20歳の男子大学生は今回初めてファン同士で発表を見守った。「残念だが、また多くの作品を読んで来年の発表まで精進したい」と、愛読書を手に話した。

新宿本店では、受賞が期待される著者やこれまでの受賞者の本を並べたコーナーを特設。10年ほど前からメディアの取材が入るようになり、パブリックビューイングを開催するなどしている。露出も増え、多くの人が来店することから、ノーベル文学賞の発表時にはすぐに作品を店頭に並べている。

店内 書店

ノーベル文学賞の説明や注目の著者の作品が並ぶ特設コーナー

書店は受賞者が発表された瞬間から1秒を争うスピード勝負となる。発表を受けてすぐに受賞者の名前を書いたパネルを準備し、店内にある著作を集める。今回は海外の著者だったため、まずは店内にある翻訳本3冊を集めて並べるも、あっという間に客が手に取っていった。

同時に、店の外では店員が走っていた。本店から約1キロメートル離れた「Books Kinokuniya Tokyo(BKT)」では、店員が受賞者の作品を検索したり知恵を絞ったりして、作品を集めるために店内を奔走。できる限りの本を集めて袋に入れ、BKTの小林麗奈氏が店を走って出発。1秒でも早く店頭に並べるため、中間地点で新宿本店の野津綾花氏が待ち構え、本を受け取りひたすら走った。こうして店員の「バケツリレー」で届いた洋書も、無事客の手に渡った。店舗には在庫を問い合わせる電話もあり、目の回る忙しさとなった。

店内 書店

店員が走りつないで届けた書籍

1冊でも多く店頭に届けたいと、小林氏はBKTに戻った後に追加の1冊を持って、さらに新宿本店に走って届けた。野津氏は多くの客が特設コーナーを見たり本を手に取ったりする様子を見ながら、「ノーベル文学賞や本屋大賞などが発表されると、普段あまり読書をされない方が興味を持ってくれたり、作者の他の作品にも注目が集まったりするので、書店としてうれしい」と話した。

新宿本店では、今回受賞したカーソン氏の著作のほか、これまでのノーベル賞受賞者の作品などの特設コーナーを1カ月ほど設けるという。

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