「汗かいて、心を動かす。」。博報堂は5月、新卒採用に使う動画をYouTubeに公開した。新卒採用向けに制作した動画だが、再生回数は5カ月経たないうちに7万回を超えた。SNSでも同社のメッセージや働き方に共感する投稿が多く、「働く人への賛歌」にもなっている。博報堂の採用動画はなぜこのように多くの人の心をとらえるのか、動画はどう生み出されたのか、動画を手掛けた博報堂のチームに聞いた。
♪世の中を動かすのは 簡単なことじゃない いつだって 人の心を動かすのは 簡単なことじゃない だれだって
「新卒採用の動画を5年担当しているが、今年はより博報堂らしいものができた」と語るのは、同社クリエイティブ局クリエイティブディレクターの山崎博司氏。今回の制作を前に人事担当者から受けたオリエンテーションは、従来のものとは明確に変わっていた。
これまでは、学生に寄り添い並走することを重視しており、今回の採用ムービーを担った人事室タレントアクイジション部の白井一真氏や市川由季乃氏らが属する採用チームにとっても、学生とのコミュニケーションでそうした姿勢を同社の大切な軸として据えてきた。その成果もあり、就職先の人気ランキングに社名が挙がり、応募数の増加にもつながった。それに加え、同社がさらに変化や進化を目指すタイミングで自ら能動的に仕掛けていく人材に出会いたいと考え、今年、メッセージを大きく変えた。
♪いちにち いちにち じだいは変わる 立ち向かっていく かだいも変わる 正しいだけの答えになんて 熱狂しないから
頭を抱える、電話をしながらタイピングする、空を見る、パソコンを抱えて走る——。動画に出てくる社員の姿は、撮影のための演技ではなく、ありのままの姿だ。普段の職場であるため映せないものは除いたが、それ以外は社員が苦悩する姿も、生き生きと躍動する姿も、そのままに描いた。
♪かんがえて かんがえて かんがえて かんがえて ひねりだす ひねりだす
実は、この動画に使われている音楽は、博報堂の制作チームが作詞し、3人組バンドのゴリラ祭ーズに作曲、歌唱してもらったものだ。「汗かいて、心動かす。」というスローガンからステートメントをつくり、それを紐解くような文章を紡いだ。その文章を動画にするとき、ナレーションを入れたり、テロップで出したりという手法もあるが、山崎氏は「それだと伝えたいことが伝わらないと思った。『汗かいて、心動かす。』とぼくらが掲げているのに、ぼくらは何も汗をかいていないじゃないか」と考え、歌にするという案を取り入れることを決めた。



