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コラム

CSR視点で広報を考える

2011年、ISO26000でCSR報告書の流れが変わる

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「社会貢献ビジネス」で企業価値を差別化する

経済産業省ホームページの環境報告書プラザは登録が任意ながら企業で作成された多くの環境報告書やCSR報告書を閲覧することができる。このサイトによれば、2002年(344社)、2003年(404社)、2004年(525社)、2005年(632社)、2006年(728社)、2007年(786社)、2008年(762社)、2009年(800社)と確実に登録件数は伸びている。

また、各報告書の内容を見ると数ページのものから数百ページに及ぶものまで様々である。その中には英語版も2009年には254社が掲載されている。手作り感のあるユニークな報告書もある一方で、ガイドラインに沿っているものもある。各社のCSR報告書の始めに「編集方針」があり、その後に「参照ガイドライン」が記載されているので、どのガイドラインに沿ったかがわかるようになっている。

今年は、ISO26000元年にあたり、どのくらい多くの企業がこのガイダンスを参照するかが注目されている。ISO26000は第三者認証を目的としないガイダンスではあるが、世界最大の国際標準化機関ISOによってマルチステークホルダー・プロセスで(多種多様な関係者の作業工程を経て)開発されたあらゆる種類の組織に向けた社会的責任に関する初の包括的ガイダンス文書である。

ISOが組織の社会的責任の規格案を作り始めたのは2005年3月であり、その後約5年の歳月を経て、企業、消費者、労働組合、政府、NGO、有識者はもちろん、途上国や国際団体等の470人にも及ぶ参加者が作業を分担して、国際投票で93%の賛成票を得て承認されたものである。

これまでCSR報告書に関して国内で参照されている主なガイドラインは、①GRI報告書ガイドライン2006、②環境省環境報告書2007などであったが、企業独自の編集方針によって作成されているものも少なくない。

また、CSR報告書の主となる活動内容には、企業倫理・社会責任の視点から事業内領域としてコンプライアンスを軸とした「法令遵守責任活動」やリスクマネジメントを軸とした「自己規制責任活動」が、また事業外領域として環境対策などを軸とした「社会責任活動」などが記載されるのが一般的であった。

さらに、社会戦略として各社特徴が出るのは、事業外領域での「慈善的社会貢献活動」や「投資的社会貢献活動」であったが、今後、最も注目されるのは、事業活動を通じた社会革新を具現化する「社会貢献ビジネス」の分野であろう。

この分野は「将来の世代の人々が自らのニーズを満たす能力をそこなうことなく、今日の世代のニーズを満たすような発展」(sustainable development:持続可能な発展)を実現することであり、企業の事業存続と社会貢献とが密接に関わることを意味している。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
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