岸 勇希(電通 コミュニケーション・デザイン・センター クリエーティブ・ディレクター/コミュニケーション・デザイナー)
「伝える」の限界
「広く告げる」と書いて「広告」。この仕事が今も存在しているのは、広く伝えることでクライアントの課題解決を実現してきたからである。何を伝えるべきか?「What to say?」、どう伝えるか?「How to say ?」は、これからもコピーライターの基本である。しかし、「伝える」だけでは、世の中が動きにくくなってきていることも事実。「伝える」=「ものが売れる」という公式に、限界が来ているのだ。
伝えるだけで解決できないような、複雑で根深い課題がより多く存在するようになってきたとも言える。例えば商品広告。凄まじい経済発展を経て生き抜いている商品はいずれも優れており、伝えなくてはならない有意差が小さく、結果伝わっても人の気持ちを動かすに足らないものが増えているのである。
もう一つ、根深い課題の増加が挙げられる。例えば「若者の政治離れ」という課題。ポスターやテレビCMといった「伝える」で解決する気は正直まったくしない。長年の歪みや積み重ねが生んだ根深さは、そうそう簡単には解決できない。
こうした状況で、相変わらず「伝える」で解決することに固執するべきか。当然NOである。課題解決のためにあらゆる方法論を考え、実行していく。アイデアと実行力で課題を突破していく。ここがコミュニケーション・デザインの主戦場である。
from “SAY” to “DO”
「♪ 幸せなら手をたたこう、幸せなら態度で示そうよ、ほらみんなで手をたたこう」こんなコミュニケーションが求められる時代だと思う。SAY(発言や発信)だけがコミュニケーションではない。DO(行動)こそが、飽和した人の心を動かすことも少なくないのである。
ソーシャルメディアの登場により、企業の意思や誠実さといった本質的な“振る舞い”が生活者に伝わるようになった。良くも悪くも透明度の高い情報環境である。人の心を動かすためには小手先では通用しない。何を言うべきか(SAY)ではなく、どう振舞うべきか(DO)、の提案が求められているように感じる。
岸 勇希(きし ゆうき)
広告に限らず企業の商品開発や事業デザイン、空間・都市計画に至るまで、より広義のコミュニケーション・デザインを実践。最近ではトヨタ自動車「AQUA」のキャンペーンを手がける。著書に「コミュニケーションをデザインするための本」
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