Webは足し算、アプリは引き算

文:小林パウロ篤史



ようやっと。

暗中模索の要件定義を越え。
今週、Webサイトのモックが上がって来た。

感動は、特に無かった。というのも、この半年ずっと(進化しつつも)見慣れてきたデザインだったので、「感動」よりも「安堵」が強かった。ああ、ちゃんと動くんだ、という感じ。それよりも、動くことにより判明する問題が山積み。

全体の反応速度が遅いのではないか? コンテンツAPIのつなぎ込みに過不足は無いのか? 初めてのユーザーが悩む動線なっていないか? あらゆるPCモニターのサイズに適合しているのか?

そしてそういった問題点が、予算内に、スケジュール内に、技術的に、解決できる問題なのか? できなければ、オープン後に回すのか? そもそも解決は不可能なのか? 妥協するポイントはどこなのか?

日々、判断していると同時にiPhoneアプリ開発にも着手している。ここで、面白いことを学んだ。

「Webは足し算、アプリは引き算」。

当初、Webで出来る事をアプリにも全て実装しようとしていた。
そんなとき、紹介されたプログラマーから一喝を受けた。

「こんな使いづらいアプリを作ろうとする君たちのセンスを疑う」と。

そして教わった。「Webは足し算、アプリは引き算」だと。

考えてみればそうなのだが、人間、PCに向かうと画面の大きさや、姿勢、物理キーボードとの関係性などで、「積極的に」サイトと向かい合っている。つまり、その場合、サイトに機能を「足し算」してもよく、ユーザーも機能を試して楽しんでいる。

だが、スマートフォンはその逆。手のひらサイズの画面。物理キーボード無し、画面を直接指で押す。そうすれば当然影ができる。あるドット以下のボタンは押すことができない。また移動中であることも大いにありえる。その場合、アプリに機能は「引き算」。ユーザーは、そのサービスの「根本部分のみ」を楽しみたい。つまり、それ以外の機能は、「邪魔」に過ぎない。

この示唆は大きかった。自分たちのサービスの本質を再度見直すことができた(そのプログラマー氏に我々のアプリのプログラミングを依頼したことは言うまでもない)。

「Tech人材」とは、こういう「アウトプットに真摯」な人材なんだと思う。システムに詳しい、とか、講演で偉そうな能書きがしゃべれる、という「ハッタリTech人材」は、いつでも、どこの世界でもいる。

しかし、そうした「ハッタリTech人材」のアウトプットは、びっくりするほど、質が低い。パウロ・糸永が果たす、いや果たさなくてはならない役割は、MediaJUMPとしての成功のみならず、博報堂DYグループに、「本当のTechとは何か」を示して行くこともあるなぁ、と感じる一件でした。

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小林パウロ篤史/糸永洋三(MediaJUMP代表取締役共同経営責任者)
小林パウロ篤史/糸永洋三(MediaJUMP代表取締役共同経営責任者)

小林パウロ篤史
1998年総合商社に入社。中南米、アフリカへの自動車輸出業務に携わる。初出張はスーダン。その後、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズにて広告の最前線を経験。「ミクシィ年賀状」などで受賞歴あり。2011年4月から現職。(写真左)

糸永洋三
2000年博報堂入社。大手自動車会社などを担当。その後、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズにて、インターネット領域のメディアプロデュース業務を担当。2011年4月から現職。(写真右)

株式会社MediaJUMP: http://www.media-jump.co.jp
Twitter :  小林パウロ @paulokobayahsi  糸永 @yozoyozo

小林パウロ篤史/糸永洋三(MediaJUMP代表取締役共同経営責任者)

小林パウロ篤史
1998年総合商社に入社。中南米、アフリカへの自動車輸出業務に携わる。初出張はスーダン。その後、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズにて広告の最前線を経験。「ミクシィ年賀状」などで受賞歴あり。2011年4月から現職。(写真左)

糸永洋三
2000年博報堂入社。大手自動車会社などを担当。その後、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズにて、インターネット領域のメディアプロデュース業務を担当。2011年4月から現職。(写真右)

株式会社MediaJUMP: http://www.media-jump.co.jp
Twitter :  小林パウロ @paulokobayahsi  糸永 @yozoyozo

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