建築と不動産、分断された2業界をつなぐポジショニングに独自性

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第6号(2016年2月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。

取材対象者

高橋寿太郎 Jutaro Takahashi
創造系不動産 代表取締役 
建築不動産コンサルタント

1975年大阪市生まれ。「建築と不動産のあいだを追究する」を経営理念、ブランドコンセプトにする、不動産コンサルティング会社を率いる。2000 年京都工芸繊維大学大学院修了後、建築デザイン事務所勤務を経て東京の不動産会社で分譲開発・売買仲介・賃貸管理・コンサルティング などに幅広く携わる。扱う案件はすべて、建築家やデザイナーとコラボレーションし、建築設計業務と不動産業務のあいだから、数々の顧客の利益を創る。一級建築士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー。

 

「武蔵境の家」
建築家:ディンプル建築設計事務所 堀泰彰
不動産コンサル:創造系不動産

建築と不動産は全く異なる業種

住宅購入は「人生で最も大きな買い物」といわれる。企業においても事業所などの物件取得は、時に事業本体の成否さえ左右する重要なイベントだ。土地選びや物件探し、資金計画など、建物や不動産の取得にはさまざまな選択肢と方法がある。

ところが、どの選択が最適なのかを個人や企業が判断するのは、実際には極めて難しい。インターネット上には情報が無数にあり、欲しい情報にたどり着くだけでも大変だ。しかも大手住宅・マンションメーカーや不動産店に工務店、建築士事務所、金融機関など、業界内には多くのプレーヤーが存在している。無数の選択肢の中から適切な相談相手を見極めるのも、容易ではない。このため、高度に情報が行き交う今日においても、不動産取得は「偶然」や「時の運」に左右されやすいのが実情と言える。

「住宅購入や事業所の取得で、今までは建て主が望むものを十分に得られてこなかったのではないでしょうか。その原因は、建物と不動産をめぐる構造的な問題にあります」。こう話すのは、不動産コンサルティング会社「創造系不動産」の高橋寿太郎代表だ。

「都内で実際にあったケースですが、建物が周囲をコの字状に囲んでいる宅地がありました。宅地は南北に並ぶ形で2つに区分けして売られています。北側は価格は高いが日当たり良好。一方で南側は安いですが南面に住宅が迫り、暗くジメジメしています。この場合、明るい北側の土地に目を奪われがちですが、実際に日当たりが良い住宅が建つのは南側の土地です」。

どういうことか。都市部での建築は都市計画法により建ぺい率、容積率、高さ制限といった制約の下で行われる。このケースの場合、2区画の土地に家が建てば、北側の家は南側の家の影に大きく隠れるのは明らか。つまり「北側の土地は日当り良好」との印象は「錯覚」だったのだ。

「建て主がこうした錯覚に惑わされず、住宅の完成をイメージしながら独力で土地を選ぶのは非常に困難です。そこで土地選びの段階から、都市計画を熟知した建築士が関わることができればベストですが、土地の仲介・媒介は宅建業法により宅地建物取引士の専業と定められています。逆に、不動産業者が建物の設計監理を行うこともできません。建築と不動産は縦割りの構造で、双方間のコミュニケーションがほとんどないままに建物が建てられています」。

つまりその土地が持つ価値や可能性が十分に引き出されないまま、建物を建てる場合が往々にしてある、というわけだ。これは「本当は享受できたはずの価値を、建て主が享受できているとは必ずしも限らない」(高橋氏)ことを意味する。

「カナエル神奈川西支店」
建築家:木下昌大
不動産コンサル:創造系不動産
写真:中村絵

分断されたフローをつなげる

不動産業者は土地取引に特化し、建築家は建物づくりが専門。両者が縦割りの構造を超えて土地選び、さらにその前のプランニングの段階から連携できれば、建て主により高い価値を提供できるに違いない。

そう考えた高橋氏は2011年、創造系不動産を設立。「建築と不動産のあいだを追究する」との理念を掲げた。そこで高橋氏が提唱するのは「建築不動産フロー」という独特な考え方だ。これは建物づくりのプロセスを6段階に分解した上で、構想から供用までの作業を一気通貫で行えるようにするもの。6段階とはV(ビジョン・目標)、F(ファイナンス・資金計画)、R(リアルエステート・不動産)、D(デザイン・設計)、C(コンストラクション・施工)、M(マネジメント・供用)のことである。

「従来、前半のF・Rは不動産業者、後半のD・Cは建築家がそれぞれ担当してきました。つまりフローは前後に分断していました。これを統合して、一貫した建物づくりが行えるようにするのが創造系不動産の役割です」。

創造系不動産が関わる案件では、V(目標設定)の段階から建築家、および不動産コンサル担当の同社が建て主を支援する態勢が組まれる。同社では設計事務所と宅地建物取引事業者の両方の登録を有しており、「建築と不動産のあいだ」の橋渡しが可能なのだ。そしてR(不動産選定)で不可欠な土地の下見にも、建て主に建築家と同社が同行。こうすることで、土地選びにまつわる「錯覚」から建て主を「救い出す」ことができる。土地選びの段階から建築家が関わるため、後半のフローへの引き継ぎもスムーズだ。

前出のケースでは、建て主が建築家だったこともあり「南側の土地が適している」と意見が一致。建て主は土地探しから1年で、日当り良好の住宅を手に入れることができた。

「日本は土地や建物に関して『南向き信仰』が強く、それが土地選びで錯覚を招きやすい一因となっています。しかし南向きでなくても、採光の仕方で快適な空間がつくれる場合もあります。その土地や物件が持つ可能性を引き出す力を建築家は持っている。建て主、建築家、不動産コンサルが三人四脚となって、早い段階から『この土地ならこうできる、こういう方法もある』と打ち合わせを重ねることで、建て主の利益を最大化できます。これが建築不動産フローのメリットです」。

「三角屋根の家」
建築家:白須寛規
不動産コンサル:創造系不動産
写真:繁田諭

(続きは本誌をご覧ください)


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