コラム

高広伯彦の“メディアと広告”概論

消費者行動の再考――コンテクストプランを考えるうえで

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過去の「コミュニケーション資産」を活用する視点

そこで今の世でプラニングをするために役立つツールとして、「AIDA」、「AIDMA」以外の消費者行動モデルも頭に入れておきたい。その一つが「消費者情報処理論(Consumer Information Processing)」。簡単に言えば、消費者はモノを買うときに「すでに記憶/経験されている情報」をもとに消費行動を行う、というものだ。例えばこの考え方をベースにすると、キャンペーンを企画するときにその広告主が過去に行ってきたキャンペーンや、どう見られているか(パーセプション)などをも「うまく」活用することができるということになる。私はこれを「コミュニケーション資産」と呼んでおり、蓄積された過去の資産を例えばPRのネタ、例えば広告のワーディング、企画に利用している。

最近よくお仕事をさせていただいている大和ハウス工業にて「デスクトップジーヴォ」というツイッターを楽しめるアプリケーション(PC向け・スマートフォン向け)があるのだが、これをリリースする際に念頭にあったのは、「なんでダイワハウスなんだ?」という言葉が読んだ人に浮かぶだろうということ。同社の過去のCMで使われ、よく知られたフレーズ。住宅メーカーがツイッターアプリを出すなんてまさに「なんで?」となり、それが結局ソーシャルメディアやブログ上で話題化する、という構造を想定していたのだ。もちろん同社のキャンペーン自体は別のものに移っているのでこのフレーズが前面に出ているわけではない。しかし消費者の頭の中には「在る」のだ。

広告は、商品の購入後も「効く」

また、ほかにも消費者行動や広告効果モデルについて再注目したいものに、「強い効果/弱い効果」理論というものもある。惜しむべきことに昨年逝去した、アンドリュー・アーレンバーグが提唱したものだ。至極真っ当に思われるが、ブランド認知(awareness)やトライアル(trial)は、必ずしも“広告”だけではなく、店頭での刺激によっても起きる。それゆえ、広告は認知などを促進させるという役割だけでなく、購買(購入)後に商品・ブランドへの好意的態度を強化(reinforcement)し、リピート購入を促進する(nudging)というのがアーレンバーグの主張。これを、ブランドへの態度/購入意向をテレビなどを中心としたAIDMA的モデルで促進されるという主張を「強い効果モデル(strong theory)」というのに対し、購買以降に効くのだと主張する彼のモデルを「弱い効果モデル(weak theory)」という。

一般的に購買にあたって検討機会の少ないコモディティなどはアーレンバーグの主張のほうが適切らしく、何も考えずに購入、でものちのちCMを見て、「あ、これこないだ買ったやつだ」という流れになってブランドへの好意度を強化していくという。この「弱い効果モデル」は現在CMが置かれている状況において、「CMをどう使えばいいか?」について考えさせてくれる研究テーマではないかと思うのだが。

さて、この消費者行動モデル・広告効果モデル領域はいくら勉強しても足りない。いくらでも語れそうなのだが、実務上、プランニングをする立場としてはこれらからインスピレーションを受けて企画をしていけばいいのではないかと思っているとだけ伝えておこう。というのも、とりわけ、AIDMAからの派生モデルはソーシャルメディアが出てきてますます多様化しているが、それらは概して「メディアにもとづく」モデルにすぎない。そうしたメディアの影響は確かに消費者行動を変える大きな要因である。しかしながら、消費者が過去に得てきた情報や広告がマーケティング上置かれているポジションも加味する必要だってある。そうしないと、「コンテクスト」を発見し、検討し、企画することなどできないわけで。それゆえ広告やマーケティングにおいて、「学び」や「発見」を得たい人たちは「新しいメディア」に注目するだけでなく、いろんな消費者行動モデルに触れて欲しいと思う。

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