マーケティング主導で進めるのがベター
AMNは企業活用のため「ソーシャルメディアトレーニング」サービスを開始すると発表したほか、日本PR協会では活用指針の発表を検討するという。PR会社バーソン・マーステラのリードデジタルストラテジスト、熊村剛輔氏は運用指針を外部の力を借りて作成した事例を紹介した。全日本空輸(ANA)の高柳直明氏は社内のソーシャルメディア活用に関して外部の人間によるプレゼンテーションの効果が大きかったと話している。
企業姿勢に限らず、ソーシャルメディアを社内で誰が行うのが良いのかという問題が生じる。ソーシャルメディアを社会インフラと考えた場合、長期的な視点では全ての活動に盛り込まれるべきであろう。
しかし、短期的には誰かがイニシアチブを取らねばならない。富士重工業の鈴木曜氏はマーケティング推進部として行った事例を3件披露した。その中の施策の一つ「ピンチなう」は、監視機能なく運営したがネガティブな発言も大きな問題にならなかったという。このように企業の体制などにもよるが、筆者はまずはマーケティング主導で広報のリスク管理機能を活用するのが良いのではないかと考えている。それは往々にして活用できる予算規模も大きく、積極的な理由で活用できる機会が多いと思われるからである。さらにソーシャルメディアの導入に際しては社内の部署間調整が欠かせないということで、ANAは関連する10部署が月1回集まり90分の会議を行っているということであるが、その主催はマーケティング担当部署であるそうだ。
またセミナーでは担当者が会社を代表し活用を始めて既成事実化する事例も紹介された。昨年多くのフォロワーを得たアカウントにそのような傾向が見られたという。しかしこの手法に関しては反対する意見が多かった。個人で参加する場合はともかく法的な意味合いも含め「会社を代表」する立場では行わない方が良いであろう。たとえ法律的に問題が無くても社内の規定に抵触することも考えられる。日本電気(NEC)の朝火英樹氏はソーシャルメディアガイドラインの重要性を提唱する。していけないという規制だけではなく、逆に会社としてしっかりソーシャルメディア活用を促進するためにも役立つということである。
筆者も昨年多くの部署と議論を重ねながらソーシャルメディアポリシーの導入を行った経験がある。策定に当たっては企業独特の文化を取り入れながら、特に顧客や社内から批判を浴びそうな部署、例えばお客様相談センターや広報関係の理解を得ながら一緒に進めることが重要だと考えている。そして、同時並行的に社内教育を進めてゆくことでお互いの理解を深め、どのように活用することが会社のメリットにつながるかの議論を通じて作り上げていったのである。時間のかかる作業ではあるがソーシャルメディアにきちんと対応する上では一番の近道かもしれない。
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