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コラム

CSR視点で広報を考える

危機管理の原則はサバイバル 最終的には自身で判断を

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「危機的事態」の情報管理に対応する

大規模地震・大津波から始まった東日本巨大地震は、未曾有の被害を伴い、国民・国土に戦後最大の犠牲を払うことになった。現在もライフラインが遮断され、原子力発電所における危機的状況を呈している。

今回の地震や津波、原発事故において関係者が頻繁に発する「想定外」という言葉に象徴されるように、「危機」はもともと予見されていないか、予見を超えたところで発生するもので、情報不足が常につきまとう。

そのような場合、人の判断は偏りがちで、自分の意見に合致する補強的情報を過大に評価し、反証情報を過小評価する兆候が見られる。さらに言えば、限られた情報を基に、迅速な判断を求められると視野狭窄(きょうさく)的となり、独断的結論に帰着させる傾向が強くなるため、誤った経営判断が誘引される。

「危機」はこうした場合、人の隙間に入って人の気持ちを弄(もてあそ)び、ぐらつかせる。あの時こうしておけばよかった、と常に考えさせられるのが「危機」である。振り返った時にはもう遅い。

「危機」は始まったばかりのときが最もコントロールしやすく、ある程度事実関係が顕在化してきた頃には手遅れになりかけている。潜在的な危機的状況の段階で既に危機は現実のものであり、これに気づかない者はすべてを失う、のが危機管理の鉄則である。

情報管理とは、危機的事態における「情報収集」「事実確認」「噂の排除」「伝聞情報の検証」 「機密情報の漏洩対策」など情報周りの的確な管理を指すもので、事実に基づいた正確な分析とそこから引き出される高度が蓋然(がいぜん)性を伴った適正な予測を導き出すことである。

東日本巨大地震では、政府発表や東京電力、あるいは専門家の意見の中にも、「●●を否定するものではない」「●●が発生しているものと思う」「●●であると聞いている」「事実を確認するにはデータを検証して分析する必要がある」「●●であると確信できない」などの表現が数多くあり、事実検証がなされていない不確定情報が蔓延している。

一方で、どのような状況に至るとどんな危険な事態が発生するのかという具体的なリスク情報が全くなく、「危険な状況」「予断を許さない」などの抽象的な言葉が頻繁に使用されていることも一つの特徴となっている。例えば、記者が具体的事例を挙げて将来の危険性について分かり易く説明してほしいと聞くと、「最悪の事態を避けるべく懸命の努力を続けている」などの表現で言葉を濁してしまう。「最悪の事態」とはどんな状況なのか!?

国民は今、まさに自分の身は自分で守るべくどのような危険が差し迫っているかを知る権利があり、またその情報を欲している。政府は話すことでパニックを起こす危惧よりも、あらゆる可能性を含めた詳細な説明をすることで国民一人一人に自己判断させる勇気を期待したいものだ。

危機的事態に直面し重要なことは、あらゆるリスク発生を前提として蔓延する情報から断定的な判断に偏重せず、柔軟な対応ができるよう留意しなければならない。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
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