有機農業でさえもテクノロジーを無視できない時代」――13年ぶり発刊 『WIRED』日本版編集長 長﨑義昭氏

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“本文主義”を徹底 新書一冊を上回る文字量

WIRED VOL. 1 Photo: NASA images ©WIRED 2011. All rights reserved.

コンデナスト・ジャパンは6月10日、アメリカのテクノロジー雑誌『WIRED』の日本版を発刊した。同誌はかつて、1994年から98年にかけて日本でも同朋舎出版から発売されていたが、13年の時を経て新創刊された。

編集長を務める長﨑義紹氏は、かつて世界文化社で『Begin』や『MEN’s EX』などの創刊に携わり、最近ではユニクロや日本マクドナルドのWEB戦略にクリエイティブディレクターとして参画するなど、紙とデジタルの双方で豊富な経験を持つ。今回の『WIRED』日本版でも、誌面だけではなくWEBサイト「WIRED.jp」とも連動したコンテンツ展開を進める。さらに今後はアプリの立ち上げも予定している。

『WIRED』は紙とデジタルのクロスメディア展開に特徴があるが、そのひとつが、「ストーリー」と呼ばれる一つひとつの記事の作り方だ。「起承転結が明確で、かつ書き手も自分なりの意図を持って書いている。今はツイッターの書き込みやオンラインニュースの見出しなど、キーワードに触れただけで情報を知った気になる人も少なくない。しかし、キーワードの一歩先にあるものを伝え、読者の方に何かを考えるきっかけを与えることが雑誌の役割だと思っている」と長﨑氏は話す。

結果的に一つひとつの記事にボリュームがでるため、全体の文字数は平均的な新書一冊分の文字数を上回る量になっているという。「今は写真とキャプションだけで見せるような雑誌も見られるが、『WIRED』 はあえて“本文主義”を貫く」。

あらゆる業種でテクノロジーは不可欠

さらにデジタルテクノロジーも活用し、文章以外の複合的な情報発信にも意欲を示す。すでに誌面の記事に関連した動画をWEBで流したり、WEBで独自に連載していたものを誌面でまとめて掲載するなど、本国にならい、日本でもマルチプラットフォーム展開を指向している。「こちらから投げかけた考えに対して、それぞれの読者がどう思ったかを投げ返してもらえることが、WEB活用のメリット」と話す。

今回の発刊に際して、編集部としてツイッター、フェイスブックのアカウントも開設。初号の企画にも活用した。「WIRED大学 新・教養学部の必読書50」で紹介する本を選ぶにあたり、まず事前に編集部で100冊をセレクト。そこから50冊に絞るため、フォロワーにツイッターでの投票を呼び掛け、結果的に4000近い投票が集まった。さらに、『WIRED』発売後には、この50冊を実際の書店でまとめて展示するプロモーションも複数の店舗で実施された。「デジタルだけで終わらないフォローアップの仕組みまで作ることで、発売日をまたいで効果的なプロモーションができた」と振り返る。

初号では、グーグル、アウディ、パナソニック、ダイソンなど、業種を問わず多くの大手広告主企業からの出稿が見られた。「たとえば自動車メーカーだからと言って自動車雑誌に広告を出すのではなく、WEBやデジタルのリテラシーが高く、購買力のある人に見てもらいたいという声はクライアントからも聞かれる。今では金融もファッションも、さらには有機農業でさえもテクノロジーを無視できない。そういう意味では、どのような業種でも可能性があると言える。それも単に誌面のスペースを売って出稿してもらうという関係性ではない。マルチプラットフォームを活用し、『WIRED』の文脈の中でブランドと読者をつなげる手伝いをしていきたい」と話す。

「宣伝会議」7月15日号より転載


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