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複雑化する購買過程をいかに読み解くか?―米国発「ショッパー・セントリックマーケティング」

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11月17日、マッキャン・ワールドグループは、親会社であるインターパブリックグループ内でショッパーインサイトを専門とするコンサルタント会社「ショッパーサイエンス」の東京オフィスをモメンタム ジャパンと共同で立ち上げた。

同社は独自の調査手法・ツールを使い、ショッパーインサイトを分析。購買決断プロセスにおいて購買に真に作用する要素を見極め、クリエイティブ戦略、メディアチャネルの最適化を提案する。その過程ではショッパーへのインタビューほか、脳波や生理学的反応など、顕在化していないインサイトまで掘り下げて分析している。

ショッパー・セントリックマーケティング

ショッパーサイエンスCEOのジョン・ロス氏。


ショッパー・セントリックマーケティング2

第2部のパネルディスカッション。

サービスのローンチにあたり同日、「ショッパーサイエンス」のCEOであるジョン・ロス氏らを招いたセミナー「ショッパーサイエンス・イン・ジャパン」が東京・アカデミーヒルズで開催された。

登壇したジョン・ロス氏は「リテールの世界にも『リテール3.0』と言える環境変化が起きている。メーカーからリテール、そして今ではショッパーへと主権者が移り変わっているにも関わらず、今でも企業の戦略においてリテールは一番最後に考えられている。しかしショッパーが力を持ち始めた今、リテールから始まるショッパー・セントリックなマーケティングプランが必要とされている」と話した。

またロス氏は多様な情報源から必要とする情報を瞬時に入手できるようになった今、購買過程も「認知・関心・検討・試用・購入」までが、きれいなパーチェスモデルを描くようなプロセスではなくなっている、と指摘。1000円程度の商品の購入に際し、ネットで情報を得たり、息子に相談したり、7つの経路から情報を得て、購入意思決定を下した自身の妻の話を例に出しながら、デジタルテクノロジーも駆使して情報を得、過程を前後に移動しながら購買の意思決定を下すショッパーの現状について、説明した。

そこから「First moment of truth(店内、陳列棚)」、「Second moment of truth(自宅、商品の使用、消費の瞬間」以外に、店頭に至る前段階、自宅など店外を含めた買い物前のオンラインメディア(同社では「Zero moment of truth(ZMOT)」と呼ぶ)での体験を重視する必要性を説いた。

ロス氏の講演に続いて、第2部ではパネルディスカッションが行われた。氏に加え、中央大学ビジネススクールの中村博教授、グローバルでショッパーマーケティングに注力するコカ・コーラの本社にてエマージング・ショッパー・テクノロジーズ部門ディレクターを務めるマイク・ホーニゴールド氏が登壇。第1部のロス氏のプレゼンテーションも踏まえ、この概念をリテールマーケティングの実践の場でどう活かすか、また日本市場にどのように適用させていくか、議論がなされた。 

マイク氏は「飲料カテゴリーにおいても、モバイルやSNSなどのテクノロジーの進化が、購買行動における情報収集行動をめまぐるしく変化させている。店頭に至る以前、ZMOTでの体験を踏まえたショッパーマーケティングが必要とされている」と話した。

またロス氏からは、米国におけるケーキミックスのショッパーインサイト分析事例が話された。価格や味ではなく、「パーティのアイデアや失敗しない自信を持てること(ケーキミックスは、パーティのある日に使用されるものであるため)」が重要だったとし、企業側が伝えたいこととショッパーが知りたいことの間には、多くの場合ギャップが発生しているとの見解が示された。これに対しマイク氏も「商品が実際に使用されるオケージョンを踏まえた店頭でのメッセージ発信を重視している」との発言があった。

それに対し、中村氏も「企業、特にメーカーはパッケージや店頭でも、製品の機能性を前面に打ち出してしまうことが多い。機能性を訴求した乳製品が調査した結果、健康のためではなく子どものおやつとして食されていたことが多く、パッケージをリニューアルした事例があった。企業側が強みと考えることではなく、実際にどういう場面で使われているのかを見る必要がある」と続けた。また中村氏は「日本の流通は欧米に比べると、その多様性に特徴がある。商品カテゴリーのみならず、流通の業態によって、ショッパーのインサイトは異なる」とし、日本は特にショッパーマーケティングが必要とされる市場ではないか、と話した。

最後にロス氏は、「ショッパーに対する理解をリテールの場だけでなく、メーカーにおいても組織全体にフィードバックしていくことが大切」と話し、ショッパーインサイトを中心に据えることで、統合された組織構造も実現できるのではないか、との考えを示した。