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【第49回宣伝会議賞 審査員に聞きました②】

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現在、まさに審査が進行中の第49回宣伝会議賞。第一線で活躍するコピーライター、クリエイティブディレクターの皆さんが、33万通以上という膨大な応募作品の中からキラリと光る言葉を発掘すべく、忙しい合間をぬって審査してくださっています。

各審査員が、担当課題の審査を順次終えている今日この頃。事務局は、審査を終えた審査員の皆さんに今年の審査の感想や、作品に対する印象などを伺いました。

このインタビュー記事を、期間限定のシリーズ企画として順次アップしていきます。

アサツー ディ・ケイ 野原ひとしさん

野原さん

本日一人目は、アサツー ディ・ケイの野原ひとしさん。山崎製パンやロート製薬、味の素ほかBtoCのクライアントを多く担当し、広告電通賞やACC賞、ロンドン国際広告賞など国内外の賞を多数受賞しているコピーライターです。今回、初めて宣伝会議賞の審査にご協力いただきました。。

――宣伝会議賞の審査はいかがでしたか?

野原さん かつては私自身も、宣伝会議賞の応募者でした。審査員へと立場が変わって、感慨深いものがありますね。

――審査作品には、どのような印象を感じましたか?

野原さん 面白いアイデアの作品もありましたが、課題となっている商品・サービスへの理解が不足している作品があったのが残念でした。

――今後も、最終審査に向けて審査が進行していきますが、どんな作品が最終審査に残っていくと思いますか?
 
野原さん 大変良いと思ったのは、切り口が新しくて、シンプルな作品です。そういう作品に、最終審査まで勝ち抜いていってほしいですね


課題である商品・サービスを深く理解することで、いまの時代背景とリンクさせたアイデアを生み出すことができます。

大広 安路篤さん

安路さん

さて、本日二人目は大広の安路篤さんです。近鉄やサントリー、WOWOW、H.I.S.など幅広いクライアントを持ち、クリオ賞、日経広告賞、NY ADCなど国内外で受賞多数のコピーライターです。

――今年の作品の印象はいかがでしたか?

安路さん 私が担当した課題は、切り口を考えるのが難しかったようです。「てにをは」のテクニックに優れている人はもちろんたくさんいましたが、驚くような切り口のものはそう多くなかったかもしれません。毎年、コンテストならではの面白いコピーを選ぶか、より実践的なコピーを選ぶか悩むのですが、今年もそのバランスが難しかったですね。

――そうした多くの作品の中から、安路さんはどんな作品を選びましたか?

安路さん 字が汚くても、言葉が荒削りでも、切り口が新しいものを選びました。コピーライターの「原石探し」をする感覚でしたね。たとえ誤植などがあっても、鍛えたら上手くなるだろうなと思える、はっとするような切り口を見せてくれるものを選びました。今回残念ながら通過させることができなかった作品の中にも、「ハチャメチャなコピーだけど、この人と会ってみたい」「この人と一緒に仕事をしてみたい」「鍛えれば、伸びそうだ」という作品がたくさんありました。

あとは、課題である商品・サービスの本質をしっかりと見つめ、的確に捉えたものは目に留まりましたね。コピーを書くときは、その商品・サービスの「仮想敵」を設定して、敵にはない、魅力や特徴を捉えることが一つのポイント。広告は、できる限り商品に寄り添ったほうがいいと考えていますので、そういう作品を積極的に選びました。

――今後、最終審査に向けて審査が進行していきますが、どんな作品が最終審査に残っていくと思いますか?

安路さん 震災の影響もあり、「絆」「つながり」を感じられるような どっしりとした作品が残っていくかもしれません。でも、意外に斬新で「きわどい」表現のものが残るかもしれませんし、結果を見るのが楽しみですね。


課題を表層的に捉えるのではなく、本質を見抜き、的確に表現する力も必要です。

博報堂 吉澤到さん

吉澤さん

三人目は、同じ赤坂は博報堂の、吉澤到さんです。吉澤さんが手掛けた花王アジエンスの「世界が嫉妬する髪へ。」は、知っている人も多いのではないでしょうか。朝日広告賞グランプリ、カンヌライオンズ銅賞など国内外の受賞多数のクリエイティブディレクター/コピーライターです。

――今年の作品の印象はいかがでしたか?

吉澤さん ぱっと見た印象ですが、「愛」や「絆」、「家族」といったテーマが盛り込まれた作品が多く見られたように思います。私自身、そういうテーマが好みなのでつい多く選びそうになったのですが、バランスを見て、ほかの切り口も幅広く選ぶようにしました。
       
――特に印象に残ったのは、どのようなコピーですか?

吉澤さん ささやかなことに、はっと気付かせてくれるコピーでしょうか。コピーを読むことで、その商品・サービスに対する見方がちょっと変わったりとか……商品を使っている幸せな情景が浮かんでくるような作品もいい。商品自体の魅力だけではなく、その周辺にある「物語」が描けている作品が、とても好印象でした。

あとは、書き手の気持ちが伝わってくるような作品。理屈で語るのではなく、実感がこもっている作品のほうが印象に残ります。言葉に書き手の想いや人格が表れた、人間味のあるコピーにとても魅力を感じました。

例年、面白いコピーを書こうとして、そのコピーに登場する人物をバカにしたりといったネガティブなアプローチの作品があるのですが、今年はそうした作品が少なかったように思います。読み手(ターゲット)をポジティブな気持ちにしてあげたり、救ってあげたり、励ましたり……そういう、書き手の思いや愛情を感じるコピーのほうが好感を持てていいですね。
       
――今後、最終審査に向けて審査が進行していきますが、どんな作品が最終審査に残っていくと思いますか?

吉澤さん 奇をてらったものではなく、商品・サービスの特徴を、今の人々の気持ちにぴったりはまるように表現できているコピーではないでしょうか。震災後初めての宣伝会議賞、どのようなコピーがグランプリに選ばれるのか私自身も楽しみにしています。


読み手の気持ちに寄り添って考える。コピーの基本ですが、とても大切なことです。

博報堂クリエイティブ・ヴォックス 井村光明さん

井村さん

本日最後、4人目は、博報堂クリエイティブ・ヴォックスの井村光明さん。日本コカ・コーラ「ファンタ」、森永製菓「ハイチュウ」など皆さんも良く知る商品を多数手掛けるクリエイティブディレクター/CMプランナーです。

――今年の作品の印象はいかがでしたか?特に、井村さんの目を引いた作品はどのようなものでしたか?

井村さん 自由にアイデアを膨らませた、おおらかな作品が、見ていて心地が良かったです。商品・サービスには、語るべき特徴がたくさんあるもの。でも、膨大な情報を詰め込みすぎたり、考えすぎたり、複雑に発展させすぎた広告は、かえって伝わらない。「このくらい言えば、十分伝わるだろう」と割り切ることも、時には大切だと思います。

商品特性がしっかり説明できている作品もちろんありましたが、それよりは、読み手として気持ちが良くなるようなものを選びました。人の心に一番響くのは、変に頭を使って作り込んだ表現ではなく、自由でのびのびとした表現なのだとあらためて気付かされました。たくさんの作品に、頭をほぐしてもらったように思います。

――今後、最終審査に向けて審査が進行していきますが、どんな作品が最終審査に残っていくと思いますか?

井村さん 毎年、グランプリに残るのは本当に素晴らしい作品ばかり。「こんなコピー、俺には書けない!」と思うほどです。どんな作品が残るかというと難しいですが、グランプリに選ばれるような作品の作り手は、きっとすべての課題に取り組んだ上で、「これは」という作品を応募しているのではないでしょうか。どんなクライアントの、どんな商材でも、しっかり考えて広告という形に落とし込む力をすでに持っているの人なのだろうと思います。


広告は、受け手の心を動かして初めて意味をなすもの。情報を伝えるだけではなく、「心地よさ」を提供するという視点も重要ですね。

審査員の「言葉にかける情熱」に迫るインタビューはまだまだ続きます。