3月11日で、東日本大震災から1年を迎えた。この1年、被災した自治体が東京都内に出店しているアンテナショップでは、盛況が続いている。農畜産物や水産物の安心・安全を伝える情報発信がより求められる中、どのように風評被害を払拭し、“応援消費”を促しているのか。
※本記事は3月15日発売『宣伝会議』の特集「食品・風評・自分の将来~心配を安心に変えるプロモーション」から抜粋したものです。
店内入口付近で「安全宣言」 客単価は2000円超をキープ
岩手県「いわて銀河プラザ」
東京・銀座に1998年に出店した、岩手県のアンテナショップ「いわて銀河プラザ」。2011年4月にはオープン以来最高の売上を記録し、月間で1億円を突破した。
「ピーク時には月間で約7万5000人が来店、約4万人のお客さまに実際に購入いただいた。現在はやや落ち着いてきたが、購入客数は3万人前後で推移。震災後は毎月、平均購入額が概ね2000円を超えている」と説明するのは、岩手県東京事務所の大久保立氏(企業立地観光部)だ。ショップ自体の認知拡大とともに、広く岩手県産品が支持されていることが分かる。
ショップの目玉のひとつが、地元のメーカーや商店などが週代わりで出店する直売イベントである。例えば2月末に出店した木村商店(下閉伊郡山田町)は、「さんま千枚漬け」「牡蠣の炊き込みごはんの素」といった加工品を販売した。さらに3月11日には震災から1年を迎えるにあたり、回復しつつある沿岸部の水産物などを多数集めたイベントを店頭で開催している。
「沿岸の天然ワカメも順次店頭に並ぶようになっているのと、2月には大槌町の清酒製造元・赤武酒造の日本酒『浜娘』がフランスの日本文化会館で紹介されるという嬉しいニュースもあった」といい、復興とともに、岩手産品を安心して食べられることをアピールする場も広がりつつある。
「いわて銀河プラザ」では店頭で週代わりの直売イベントを開催。2月末には、岩手県下閉伊郡山田町の木村商店が「さんま千枚漬け」などを販売した。
ショップの売上が好調である反面、岩手県も決して風評被害とは無縁とは言えない状況にある。震災後は地元の肉牛や乾燥しいたけが放射能物質の基準値を上回り、出荷停止に見舞われた。岩手県産品全体への影響も懸念されるなか、県では2011年秋に肉牛やお米の「安全宣言」を順次発表。放射能物質検査の徹底、暫定規制値を超える商品は市場に流通しない旨などを明言した。
いわて銀河プラザも、店内に足を踏み入れると「安全宣言」というフレーズがまず目に飛び込んでくる。入口付近に安全・安心を伝えるための専用コーナーを設けており、県の安全宣言を告知するパンフレット、2011年7月から月2回ペースで県が発行している「いわて復興だより」のバックナンバーなどを設置しており、来店者が自由に閲覧できるようになっている。
店舗入口付近で、県の「安全宣言」をアピールしている。
震災後に急きょ開店を決定 ガイガーカウンターも常備
茨城県「黄門マルシェ~いばらき農園~」
一方、茨城県のアンテナショップ「黄門マルシェ」は2011年7月、東京・銀座にオープンした。店内では地元産品を約600点販売するほか、カフェも併設。好きな納豆を選んで県産のコシヒカリとともに味わえるセット「納豆Bar御膳」が人気で、ランチタイムは賑わいを見せる。1日あたりの平均来店者数も400人を超え、オープン後から順調に客数を伸ばしている。
県では2010年に広報戦略室を設置し、テレビやWEBなどを活用した戦略的な広報に取り組んできた。アンテナショップの立ち上げは震災の発生後に急きょ、決定したものだ。その背景には、やはり震災や原発事故の影響による風評被害の払拭や、県への観光促進という狙いがある。
通常、アンテナショップの多くは自治体の観光物産関連の部署を中心に運営されるが、茨城県の場合は広報広聴課が主体である。2010年から県の広報監を務める塩原信夫氏は立ち上げの経緯について、「JCO事故の経験則からも、いったん起きた風評被害を払拭するのは非常に難しいと考えている。ただもちろん県としては、被害の長期化はできる限り避けたい。だからこそアンテナショップは放射能情報だけでなく、本県の情報の発信基地として位置づけている」と話す。
店頭では週末を中心に食関連のイベントを多数開催しており、過去の例では「下妻甘熟なし」のPRイベント(9月)、「稲敷市産新米あきたこまち」の無料配布(9月)、「常陸秋そば」のそば打ち実演(10月)など食関連の企画によって、県産品の安全性やイメージアップに取り組んできた。
茨城県の「黄門マルシェ」は2011年7月にオープン。写真は「下妻甘熟なし」のPRイベントの様子(9月4日開催)
「さらに店内には入口付近に、放射能について分かりやすく解説した資料データをデジタルフォトフレームで流すなど、正確な情報発信に努めている」と塩原氏。それでも不安の思う来店客のために、ガイガーカウンターを常備。自分の目で「安全」を確認してもらえるようにするなど、不安感を解消するアプローチをとっている。
「黄門マルシェ」ではデジタルフォトフレームを使い、放射能について解説したデータを流す。
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