フェイスブックページのファンへのリーチを保証
フェイスブックの新しいテクノロジーを日本に紹介するfMC Tokyoというイベントが16日に開催された。このイベントは、2月29日にニューヨークで開催された「fMC NYC」のプログラムをほぼそのままの形で展開する内容だったという。アジア・パシフィック担当のエリック・ジョンソン氏は、広告費の規模が世界2位の日本は重要な市場で、フェイスブック利用者も1000万人を超えたと発表した。6時間近いイベントでは多くの参加者が熱心に聞きメモや写真を撮ったりしており、また活発な質疑応答も行われていた。
イベントで登場したフェイスブックの新しい広告商品をいくつか紹介しよう。まずはブランドページ内にクーポン受け取りボタンを設置することが出来る「オファー(クーポン)」。クーポンはメールで送付され、受け取った消費者はそれを持って店舗などを訪問すると割引が受けられるという仕組みである、日本のモバイルクーポンの成功を世界に持ち出すインフラをフェイスブックが用意したことは世界的には大きな事となるかもしれない。
今回一番画期的であったのは「リーチジェネレーター」という商品であろう。従来のフェイスブックからの投稿は、ファンのうち平均で16%の人にしかリーチしないということだが、リーチジェネレーターでは、そのページの記事を月当たりファンの75%、週当たり約50%のファンの広告サイドバー、ニュースフィード、およびログアウトページに表示することが可能になるというのである。インプレッションなどをベースとするのではなくページのファンに対するリーチ保証という点が非常に画期的であると筆者は考えているが、ファンのアクティブ率が下がった場合の対応など実際に利用に関してはクリアすべき点がいくつかあるだろう。
キャンペーン時のみに山をつくるだけでは不十分
今回のセッションで筆者が一番共感した点は、インターネットの広告は常に消費者との接点を開放しておくことが重要で、キャンペーン時に山をつくるだけではなく常に施策を行っておく必要があるということである。フェイスブックをはじめとするソーシャルメディアなどではFLI (Frequent Light Interaction = 頻繁な軽い関係性の積み重ね)をベースに人間関係が構築されるので、ブランドも同じように消費者との関係を構築していくのが有効であると考えられる。また、インターネットでは能動的に情報を求めるのでその人の興味が自分に向いたときにきちんと誘導できることが重要で、怠っていると機会損失になりかねないのである。
これはソーシャルメディア以外では特に「検索」でもいえることであり、SEOであろうとSEMであろうとも常に自分のブランドの情報を消費者が容易に見つけられるようにする必要がある。下の図はイベントで紹介された概念をベースに筆者が作成した図であるが、常に何らかの存在感を発揮しておき、キャンペーン時には大きな山を作るという意味合いである。この戦略はインターネット以外のペイド・メディアでは料金体系の関係などで行いにくく、広告業界も慣れていないコンセプトなので提案されないため、いつどの程度まで普及するかは興味のあるところである。
上記のように今回のイベントは非常に意味のあるものであったのであるが、残念な点もいくつかあった。それはそもそもフェイスブックがどのような方向に向かっているのか、そして広告以外のビジネスモデルはどうなっているのかわからないという点である。上場を控えているので収益力を強化する必要があるのは分かるのだが、コミュニケーション構造を変えてゆく企業なだけに広告以外の今までにない全く新しいビジネスモデルを構築することが出来るのではないかと期待するのである。
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