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コラム

中国で広告一筋7年目

脚マッサージ店で覚えた(!?)私の中国語勉強法

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中国人女性は日本人女性に比べて、圧倒的に薄化粧です。会社に毎日ノーメイクで来たり、ココぞと言う時にしか化粧をしなかったりします。デートの待ち合わせに完全スッピンで登場した中国人女性に、「ワタシハダイジナトキシカケショウヲシナイノ」と言われて、ディナーを1元単位までワリカンにした日本人男性も多いことでしょう(僕のことじゃないですよ、本当ですって)。

世の中にはまことしやかに言われているが実は真っ赤な嘘だ、ということが結構あると思うのですが、そのうちのひとつが「その国の言葉を覚えたければ、その国の女性と付き合え」です。僕達はビジネスのために中国に来ていて、ビジネスのために中国語を学んでいます。女性と交際して言葉を覚えても、プロジェクターを使ったプレゼンテーションの場での「ライト消してください」くらいしか使い道がないのです。その後に「恥ずかしいから」なんてプレゼンでは言いません。

いちサラリーマンが係長から最終的には初芝電器の社長にまで出世するかの有名な漫画でも、中国語学校で真面目に勉強している人をマジメすぎる、仕事がデキル人がホステスとベッドで勉強しているのを効率的な勉強方法だ、みたいに表現しているシーンがあるのですが、あれはありえません。自分の身の回りでホステスから中国語を学んで、ビジネスレベルになった日本人は、本当に一人も居ません。

ということで、今回のコラムは僕なりの中国語の勉強方法です。

中国語は、英語のように同じ単語が過去形や複数形などで変化したりすることはありません。スペイン語のように男性と女性で形容詞の語尾が変わったりもしません。ひとつひとつの漢字に普遍的な意味があり、それらを組み合わせて意味を作ります。極論ですが、イメージとしては、一文字だけ書いた石がたくさんあり、それをどう集めて並べて意味を作るか、ということでしかないのです。
 
来中後しばらくしてそのことに気付いたため、僕の中国語勉強方法は、とにかくひたすら単語を覚えることでした。最初の1年くらいは、常にポケットに電子辞書を入れて、目についたけど頭で翻訳出来ない単語を片っ端から調べ、夜に家でそれをひたすら暗記。次の日には電子辞書の履歴からそれらの言葉は消えてしまうので、必死に覚えます。あとは、同じ意味の文章を、日本語→中国語の順番で言ってくれるCDがとても役に立ちました。日本語を聞いて、中国語を自分で言ってみる。その後に中国語の正解を聞く。語学の勉強は、別に机に向かって鉛筆とノートを使わなくても全く問題ないと思いますが、いずれにしてもコツコツ努力をした人にだけ成果が現れると思います。

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筆者のマンションに併設されている脚マッサージ店

僕の意外なオススメの中国語勉強場所は、脚マッサージ。2012年現在の上海では、大体1時間80元(1000円)くらいでキレイな脚マッサージ店でサービスを受けられます(僕が来た頃は50元くらいでした)。そこに電子辞書を持ち込み、仕事で使う用語などをひたすら言ってみます。偏見かもしれませんが、中国も日本も田舎から来た人の方が、人がよく優しいです。マッサージは大体地方から出稼ぎに来た田舎の人がやっているのですが、最初は確かに怪訝な顔をされますが、次第に打ち解けあい、1時間が終わる頃にはとっても良い先生に変貌してくれるのです。1000円でマッサージも受けられ勉強も出来る。これは最高です!

広告は、消費者と企業のコミュニケーションを作る仕事。たかが言葉ですが、本当にされど言葉です。日本人が中国で広告(コミュニケーション)を作る仕事をする上で、言葉すらできないと正直言うと話にならない。もちろん最初の1、2年は仕方ないと思いますが、少なくとも2年以上居て中国語が全然喋れない駐在員は、日本に即刻送り返すべきだと僕は強く思っています。年齢が高くなると言葉は覚えにくいので、これから日本の会社は(広告会社以外でも)、出来るだけ若い子を駐在員で送りこんだほうがいいと思います。統計を取ったことはありませんが、日本は他の国の駐在員に比べ、送り込まれる人の年齢が高すぎるような気がします。

実際には、日系企業の駐在員でビジネスレベルの中国語が喋れる人は、あまり多くないです。以前、弊社のクライアントは日系企業ばかりだと書きましたし、弊社社員も半分くらい日本語が出来ます。ではなぜそんな環境でも、広告会社の人間が、中国語が分かることがとても大事かというと、実はクライアントは、日本人の上長と中国人の部下数人、というケースがとても多く、彼ら同士が100%コミュニケーションが取れていないことが多いからです。なぜなら上司の中国語は上手ではなく、部下の日本語も完璧ではない。しかもお互いに遠慮や恐怖や様々な感情があり、完全に意思疎通が出来ていない。

僕が重宝してもらえるのは、実はその間に入れるから。クライアント企業の中国人から中国語でやりたいことや考えを聞き、彼の上司の日本人からは日本語で本社の指針や上司自身の考えなどを聞く。どちらからも頼られると、もう他の代理店や人間が彼らの間に入ることが難しくなります。クライアントの中国人は、僕のことを日本人上司の仲間という目で見ます。そんな僕とは約束も守るし、賄賂を要求してきたりも出来ません。これは本当に一石三鳥くらいの効果があるのです。

最後に余談ですが、よく日本人が真似する中国語で、○○アル、というのがありますが、あれの由来には2つ説があります。一つ目は、中国語ではよく「在」という字を使います。例えば我座在椅子上(椅子の上に座ってます)、とか我在看電視(テレビを見ています)とか。それをそのまま翻訳すると、私は椅子の上に座っている在る(アル)、とか私はテレビを見ている在る(アル)となるので、変なアルが着いたのではないか?! という説です。2つ目は、北の人は、発音の後ろにアールという音を付けます。我在看電視アール、みたいな感じです。これはもっと直接的で、この説もありえますね。

僕はこの場で断固として宣言しますが、冒頭に書いてあるように、中国人女性とお付き合いをして言葉を覚えたわけではありません。それは、僕が中国人女性と付き合ったことがないからではなく、先方の日本語がとっても上手だったからだと言う噂もありますが、その辺りのお話はまた今度飲みながらでも…

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