今年4月の発売以来、累計販売数が10月に1億本を超えたという、キリンビバレッジの「メッツコーラ」。メッツコーラはコカ・コーラやペプシコーラに挑んで1億本の需要をもぎ取ってきたのだろうか。恐らく、それは違う。従来コーラの飲用習慣がなかったり、控えていたりした層の需要を喚起したのだ。
人がコーラなどの清涼飲料を飲む「理由」とは何だろう。まず、「喉の渇きを癒やすこと(止渇効果)」だろう。それは、マーケティングの大家、フィリップ・コトラーの「製品特性分析」のフレームワークで考えれば、飲料という商品において欠かす事のできない「中核価値」である。しかし、止渇だけならミネラルウォーターで十分だ。コーラは、その「味」や「爽快感」が欠かせない「実体価値」となっている。また、止渇という中核価値とは直接関係ないが、魅力を高める要素としての「付随機能」は、「カッコよさ」などが挙げられる。
それに対してメッツコーラは、中核として従来のコーラにない「食事の際に脂肪の吸収を抑える」という価値を設定した。その他の価値はとしては、欠かせない「実体価値」が「(食事の際の)止渇効果」、付随機能が「爽快感」のようになっていると考えられる。つまり、メッツコーラは従来のコーラという飲料の価値構造を組み替え、再定義した事によって、「メタボに効くことを期待してコーラを飲む」という新たな需要を作り出す事に成功したのである。
モノが飽和して新たな価値が見つけにくい時代では、とかく「なくても構わないが、あると魅力を高める価値=付随機能」ばかりが付け足されていく。その結果、製品のカラーやフレーバーのバリエーションばかりが増え、SKU(最小管理単位: Stock Keeping Unit)ばかりが増大して流通在庫が問題になっていくのである。メッツコーラのように価値構造を組み替えて、中核価値の再定義にまで挑んだ需要創造策には学ぶべきところは大きいといえる。
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