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コラム

あの商品、このサービスがヒットするワケ

「損して得取れ」の「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」

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累計販売台数100万台を突破しているコーヒーマシン、「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」。その売れているヒミツを読み解いてみよう。

商品の価値は3段階に分けられる。手に入れることで実現したい中核価値。それを実現するために欠かせない実体価値。さらに、全体として魅力を高める付随機能である。「バリスタ」の場合、「手軽に飲める本格派家飲みコーヒー」という価値が「中核」だ。そのための実体価値は、7,980円という手軽なマシン価格と、詰め替え用インスタントコーヒーが、食品スーパーやドラッグストアなどどこでも手軽に買えるという利便性が「実体」。そして、詰め替え用インスタントコーヒーのパッケージ全体を紙製にして環境に配慮していることが「付随」だ。価値を高めるため、細部まで設計していることがわかる。

価値の設計以上に、「バリスタ」のヒットは何といってもプライシングの絶妙さに寄る所が大きい。この7,980円という値段は、マシンの質感もデザインも先行する「ネスプレッソ」や「ドルチェグスト」に遜色がないにもかかわらず、非常に安い。これは、利益率の低さを覚悟し、低価格で一気にシェアをおさえることを目的とした「ペネトレーションプライシング」であることがわかる。だが、ネスレが売りたいのは「バリスタ」ではなく、「詰め替え用インスタントコーヒー」なのだ。その関係はPCのプリンタとインクカートリッジに置き換えて考えるとわかりやすい。プリンタはその精密な機能にもかかわらず、実売価格は極めて安い。それは、利益は専用インクカートリッジで取るからだ。顧客に使い続けてもらうことで、利益を出す。これを「アフターマーケティング」というが、ネスレの狙いもまさにそこにある。
 
かつては「オトナの飲み物」として、全国の家庭どこにでもあったネスカフェのボトルコーヒー。しかし、人口動態(家族構成)の変化を反映して、少人数・単身世帯の増加とともに個食化が進みボトルコーヒー市場は縮小している。その市場で、座して死を待つことなく、価値を再定義し、新たな「売れる収益構造」を作り上げた事例として「バリスタ」からは学ぶ所が大きい。

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