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コラム

あの商品、このサービスがヒットするワケ

「顧客視点」に始まる婦人服ブランド「kay me」の躍進

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「華やかでカラダを楽に過ごせるジャージー素材」という特徴を持った婦人服ブランド、「kay me(ケイミー)」が売れている。テレビの女子アナウンサーやキャスターがこぞって着用していることでもその人気ぶりがわかるだろう。そのヒットの影には、デザインや品質だけでは語れない「顧客視点」が存在している。

アパレル業界のトレンドはファストファッションやユニクロに代表される低価格大量生産と、モード系ブランドのような高価格少品種に二極化している。つまり、マイケル・ポーターが「企業戦略の3類型」で指摘した「コストリーダーシップ戦略」と「差別化戦略」である。そこで、「kay me」は第3の選択肢を取った。「集中戦略」である。「ジャージー素材」と呼ばれる伸縮性のある素材を使用した「イタリア製プリント柄」の「働く女性のための服」というニッチなドメインで勝負している。そのドメイン設定は、「仕事にも使え、華やかで楽に過ごせる服がない」という、キャリア女性の未充足ニーズを発掘してのことである。

未充足ニーズへの対応は売り方にも顕れている。忙しく働く顧客のために、「試着便」というサービスも行っている。米国の靴の通信販売で有名な「ザッポス」と同様、不要であれば返品自由というしくみだ。利用顧客からは、「手持ちの服と合わせて試せる」「家人の意見を聞くことができる」と大好評であり、数着送った商品の中から必ず1着は購入してもらえているという。

ここで注目すべきは、顧客に対して実現しているのは「利便性の向上(Time saving)」だけではないということだ。実は、利便性を上回る「痒いところに手が届く」=「私のニーズに細かく対応してくれている」という「心理的な満足感(Peace of mind)」が実現されているのである。

ピーター・ドラッカーは「マーケティングの役割は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、おのずから売れるようにすることである」と言っている。即ち、ヒット商品を作るには、モノありきで考え、無理矢理「売り込む」のではなく、まずは「ありのままの顧客」を見て、「顧客が望む物を、望む形で」提供していくことが必要なのだ。「kay me」のヒットに見られるように、マーケティングの原点は「顧客視点」なのである。

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