世界22カ国70店舗を超えるラグジュアリーブランド「グッチ」直営ショップのウインドウを、日本の漫画が今年1月初旬から2月中旬にかけ、一斉にジャックした。
世界中で大きな話題を呼んだこのコラボレーションは、『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる漫画家・荒木飛呂彦氏とグッチのクリエイティブ・ディレクターを務めるフリーダ・ジャンニーニによるもの。グッチのコレクションアイテムを身にまとった荒木氏の描くキャラクターが、漫画を飛び出し世界中を駆け抜けた。
この異色のコラボレーションは、グッチ創設90周年にあたる2011年、日頃から付き合いのあるモード誌『SPUR』(シュプール)と何か面白い展開ができないかと話していたことが発端。集英社の“看板”漫画家である、荒木氏のファッション性の高いイラストとグッチの持つクリエイティビティを誌面上で結び付けられたら面白そう、というアイデアから始まった。
企画が動き始めたのは雑誌発売の約1年前。最初は実現不可能な夢にも思えたが、荒木氏の描く独創性のあるイラストとグッチの世界観を掛け合わせたコラボレーションを何としてでも実現させたいという日本人スタッフの力が結実、企画が現実のものとなった。
創刊以来初めて漫画が表紙を飾った『SPUR』2011年10月号は、普段モード誌を手に取らない層が雑誌を購入する姿も多く見られ、意表をつく取り組みから世間の話題をさらったことで雑誌大賞のグランプリを受賞。さらにグッチ新宿で開催された同作品の原画展は、常に入場制限がかかるほどの人気を博した。
その反響を受け、今回企画された世界のグッチショップのウィンドウ展開。ラグジュアリーブランド”と“漫画”という一見かけ離れた存在のようにも思えるこのコラボレーションによって、ブランドの新たな魅力や側面を引き出すことにつながった。普段ブランドに関心のない層も含めて、世界中多くの人々にブランドの持つ革新的な精神を広めることができたという。
オフィシャルフェイスブックページでも荒木氏の英語版の作品が展開され高い反響を集めたほか、グローバルのiPhoneアプリ「GUCCISTYLE」でも荒木氏が描く魅惑的なグッチの世界「MANGA STYLE」を展開し、これまでにない高いダウンロード率を記録している。ブランドの革新的な精神を“マンガ”を通じて発信することで、新たな層の獲得につながった。
昨年5月には、歌舞伎役者で人間国宝の中村吉右衛門と共同主催で、東日本大震災で被災した東北の子どもたちの教育支援を目的としたチャリティガラを開催。「白鵬関の朝稽古見学とちゃんこ鍋を食べる体験」や「中村吉右衛門の隈取りと歌舞伎演目衣装姿とともに撮影できる権利」など、著名文化人から出品される他では入手できない体験とともに、荒木氏のイラストが絵付けされた皿やグッチのミラノコレクション招待と世界に1点だけのグッチのドレスをプレゼントするグッチパッケージなど特別なアイテムが多数出品され、「伝統を未来につなぐ」をテーマに華やかなチャリティイベントが催された。チャリティガラを通じて集まった金額は一夜で約4000万円。その全額が東北の子どもたちの教育支援のために寄付された。
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