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コラム

楽天大学学長が語る「EC温故知新」

なぜネットで「部屋の壁紙」が月商1億円も売れるのか?

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(1)手間がかかることはマネされにくい

ワークショップは手間がかかります。手間のかかることは、簡単にはマネできません。逆に言うと、ネットショップの世界でメインになる接客の場は「商品ページ(ランディングページ)」ですが、極端にいえばコピペできてしまうので、マネするハードルが低いわけです。そこで、「いかにマネされにくい強みを持てるか」という視点が大切になってきます。

「オフラインは、物理的なキャパがあるので定員は多くできず、その割に手間がかかってしまいます。でも、それがあるからオンラインが活きてきて、『壁紙を選んで買うのはオンラインで』という、まさに螺旋的に回りながら上がっていっているように感じます」(林店長)

このように、「壁紙屋本舗」の例では、教室開催がまったくの非効率だった時期からやめずに数年間続けてきたことが、今になって実を結んでいるといえます。また、教室で初心者のお客さんと向き合うことによって磨かれたコンテンツが、次はオンラインに掲載されていく、というスパイラルも強みになっています。

(2)「知る」と「わかる」の大きな違い

商品の価値をお客さんに「知ってもらうこと」と「わかってもらうこと」には、大きな違いがあります。

知るというのは、「これまで持っていなかった情報を持つこと」です。「壁紙って初心者でも自分で貼れるんだ」と知る。ただ、知ってもらえても、壁紙は売れません。がんばって安売りセールをしたとしても、要らないものは要りません。だから売れない。もし欲しくなったとしても、「器用でない自分でもできるのだろうか?」のような疑問が解消しなければ注文ボタンは押せません。

この「知る」が「わかる」になるためには、「やってみる」ことが必要です。自分で壁紙を貼ってみて初めて「壁紙を貼るとはこういうことか! 意外と簡単だし、楽しい!」とわかります。

つまり、接客設計図として、「知る」→「やってみる」→「わかる」というストーリーを進んでもらえるような行動デザインをすることが売上につながります。

「壁紙屋本舗」の場合、ウェブのハウツーコンテンツをいかに充実させても「やってみる」の壁を越えてもらうのは相当難しいわけです。「だったらリアルで教室やろう」という、ネットとリアルをむやみに区別しない柔軟な考え方が、功を奏しています。

(3)聞いた人がワクワクしちゃうビジョンを掲げる

10年ほど前に「壁紙屋本舗」のページを初めて見たとき、「全人類職人化計画」という8文字熟語(?)を見て、「このお店は面白そうなニオイがする」と思いました。興味を引かれてページを探検したら、前述のコンテンツ盛りだくさんのページと出会って「やっぱり面白そう!」と思うに至りました。もしこれが、「セルフリフォームの楽しさを広めたい」と書いてあったとしたら、その先を探検まではしていなかったと思います。

「全人類職人化計画」という絶妙なビジョンと、その実践としての「壁紙の貼り方教室」。ここに、壁紙屋本舗ファンが増える理由がありそうです。

なお、冒頭のクイズの選択肢に「世界中を真っ白な壁で埋め尽くす」というビジョンがありましたが、社長の濱本さんは、まったく逆に「日本から白い壁をなくす!」というビジョンを持っています。「日本の壁は『とりあえず無難な白』ばかりで面白くない。カラフルでデザインも豊富な輸入壁紙で、日本の壁を楽しくしたい。業界の価値観を変えたい」という想いによるものです。これもまた、一度聞いたら忘れられないビジョンです。

※この連載では、「EC温故知新」というテーマで、「自動販売機型のネットショップにはできない売り方」でお客さんを魅了する事例などを中心に紹介していきます。

※宣伝会議9月号にて仲山氏へのインタビュー「究極の『自動販売機型』と『対面販売型』、あなたのECサイトはどっち?」を掲載しています。デジタル版でも公開中