20年かけてルアーを普及させる
個人でもソーシャル・イシュー(社会課題)に取り組めることを気づかせてくれた人がいます。池谷成就さんという方で、群馬県高崎市の中華料理店「萬来軒別館」の主人です。池谷さんも釣り人。いまも「萬来軒別館」の営業時間外は釣りをしているはずです。僕が小学生の頃、高校生くらいに見えましたから、年齢はひと回りくらい上だと思います。当時から、付かず離れず程度の距離で、たまに一緒に釣りをするお兄さん、という存在でした。
背景からお話しすると、当時の群馬県では、ルアーフィッシング(魚のえさとなる生物を模した疑似餌=ルアーを用いて魚を誘い、釣る手法)が禁止されていました。ルアーには針がたくさん付いたタイプもあり、漁法違反とされる「ひっかけ釣り」と勘違いされていたんです。
ルアーフィッシングに惚れ込んでいた池谷さんは高校生ながら、「ルアーはひっかけじゃない。えさを追う魚の習性を生かした釣りで、魚を傷つけることはしない」と地域の漁業協同組合や県に訴え続けました。それから20~30年かけて、県ではルアーが使えるようになったんです。たゆまない努力とは、こういうことだと思います。このエピソードは、自分のベースになっています。小さいことかもしれませんが、個人でも物事は動かせるという実感をもらいました。
魚を怯えさせないルアーを研究
池谷さんはまた、独学でルアーを作っています。渓流や湖で釣るイワナやヤマメ、ニジマスやブラウントラウトの生態を、自分なりに観察して理論立てている。例えば、1998年~2000年頃には、日本でもルアーブームがあったんです。ネコも杓子もルアーだ、ということで、釣り人が水辺に殺到しました。ほぼ毎日魚を見ている地元の人間ならわかるんですが、それで魚が怯えてしまったんですね。釣り用語では「スレる」といいます。
池谷さんによれば、市販のルアーに入っている錘(おもり)がよくないということでした。錘はルアーを投げ入れる際に重心移動を利用して遠くへ飛ばすためのものですが、これが水中でカチカチと音を立てて、魚がスレてしまう。池谷さんは「魚はちゃんと近くにいるから、遠くへ飛ばす必要はない」と言って、錘のないルアーを自作したりしていました。
これも信念のたまものと言いますか、最近、池谷さんのルアーが釣具の有名ブランドから発売されたんですよ。10数年を経て、全国で。それまでも地元の釣具店に細々と卸していたようですが、それで終わらないのがすごい。まだ追求していたのかと驚きました。
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