外部データから“ひらめき”を得る
野口 当社がWEBでのマーケティング・コミュニケーション活動においてビッグデータへの取り組みを開始したのは、2010年12月。販売チャネルとしてのWEBの重要性の高まりを受け、旅客販売統括本部内に「Web販売部」が発足し、その中の1グループとして「1to1マーケティンググループ」が設立されたことが契機となりました。
1日40万人のお客さまが来訪される当社サイトでのアクセス情報や、メールマガジンへの反応といったデータを収集・分析することで、お客さまのインサイトやニーズを知る。それをもとに、一人ひとりのお客さまに最適な情報を提供し、顧客体験価値を向上することをめざして日々悪戦苦闘しています。
取り組みをスタートしてから約2年。コンバージョンやクリック率の向上など小さな成果を積み重ねると同時に、新たな課題も見えてきました。
お客さまのインサイトやニーズは多様で、また時を経て変化するもの。従来のデータ分析だけでは限界があるということを痛感しています。
渋谷 たとえば同じ「30代男性」でも、車が好きな人、サーフィンが好きな人、読書が好きな人では、ニーズが全く違う。趣味嗜好やインサイトまで分析対
象を広げていく必要があります。
特に、誕生日やライフステージの変化を捉えるイベントベースドマーケティングが注目されるように、コミュニケーションにおいてタイミングは非常に重要。たとえば過去1年間にハワイに行った方が、今もハワイに行きたいとは限らない。
お客さまの直近の行動を分析することで、WEBにおけるレコメンド精度を高めようという取り組みにも着手しています。
齋藤 日本航空さんのように、お客さまの姿をリアルに見ることができる企業は、実はそう多くありません。1to1マーケティングの実現に向けた環境には大変恵まれていますね。
渋谷 おっしゃるとおり、航空業界は、ご利用時に必ずお客さまのお名前を伺うという特殊なサービス形態で、1to1マーケティングとの親和性が高い業界と感じています。
社内のデータだけではなく、ソーシャルデータをはじめとする外部データも用いてお客さまのことをより深く知りたいという思いはありますが、膨大なデータであるだけに、なかなか難しいところがあります。
齋藤 確かに、具体的な活用となるとどうしたら良いのか分からないとの声を多くのお客さまからいただきます。
当社のオープンイノベーションサービス「Smart Business Gateway」では、①ソーシャルデータ、②オムニチャネル、③ビジネスマッチングという3つの軸で企業のデータ活用をサポートしていますが、オムニチャネル実現にあたっては、“お客さまとの距離感”に十分配慮する必要があると感じています。
生活者としてのお客さまのネット・リアルの行動履歴を把握し「トレンドをおさえる」ために使うのが良いと思います。
「30代女性に、こういう趣味嗜好の方が増えている」といったトレンドの形でお客さまを見つけ、そのセグメントに向けたアプローチを考えるという具合です。
渋谷 なるほど。コミュニケーション戦略の仮説を立てるための“ひらめき”を得る手法と考えれば、活用可能性が広がりますね。
≫次ページ 「ソーシャルデータは仮説を立てるためのヒント」に続く
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