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コラム

編集会議コラム〜コンテンツの裏側潜入!〜

弱小書籍編集部がベストセラーを連発するまで(2)

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『プレジデント』を発行するビジネス専門誌の老舗、プレジデント社。雑誌は有名だが、書籍編集部は発足以来、年間でかなりの赤字を出し、一時は廃部も検討されたほどだった。しかしマーケティング部の傘下に置き、「製販一体」の部署にしたとたん変貌を遂げ、黒字転換。ベストセラーを連発するようになった。その秘密とは?

【前回のコラム「弱小書籍編集部がベストセラーを連発するまで(1)」はこちら


書籍編集部長に就任した2010年に数千万円の黒字を出し、油断したのがいけなかったのか、その翌年は『プロフェッショナルサラリーマン』(6万部)以外は振るわず、また赤字転落。

さらに結果が出ないと責任を擦り付け合うことは世の常。編集部と販売部の仲は悪化する一方だった。もともと当社販売部は雑誌がメインという体制で、細かい書店営業が不可欠の書籍はさらに売れなくなっていった。

そこで、当時プレジデント編集長で現社長の長坂嘉昭は大胆な決断をした。「製販一体体制」である。具体的には私が書籍編集部長と書籍販売部長を兼務。

書籍部を編集本部から外し、営業セクションであるマーケティング本部の所属とした。私が兼務することで人件費を節約し、もう一人書店営業部員を採用。さらに編集部を営業部内に置くことでより両者の関係を密接にした。

この目論見は当たった。この体制になってからまたヒットが連発したのである。ビジネス書大賞とHRアワード(人事関連の賞)をダブル受賞した『ワーク・シフト』(10万部)を筆頭に、『企業参謀ノート』(8.5万部)『高倉健インタヴューズ』(5万部)……。

これらはタイトルの強さもあったが、売り伸ばせたのは編集と販売が一体になってこまめに販促できたことが大きい。売れ行きが鈍ってきたらすかさず書籍の帯やPOPを変更し、書店に販促をかける。

また、売り伸ばしに重要な重版に関しても編集と販売が話し合い、最大の利益を上げるための決定ができるようになった。ベストセラーでも重版部数を間違えて返品になり、大きな損害を被る出版社は実は多く、重版で倒産した会社もあるくらいだ。「製販一体体制」はそのリスクを排除し、利益増大に貢献するシステムなのだ。

こうした取り組みはセブン-イレブンでもユニクロでも花王でも他の業界ではみな行っていたが、古い官僚体質が残る出版業界ではあまり取り組まれていなかったのだ。


プレジデント社 書籍編集部部長兼書籍販売部長 桂木栄一氏(かつらぎ・えいいち)
1965年神奈川県生まれ。90年早稲田大学社会科学部卒。同年プレジデント社入社。日本航空機内誌『アゴラ』編集部を経て『プレジデント』編集部。同誌副編集長、編集次長を経て、2010年より現職。『プロフェッショナルマネジャー』『鈴木敏文の「統計心理学」』『鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」』『成功はゴミ箱の中に』はいずれも10万部を超すベストセラーとなった。