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コラム

山本一郎と燃ゆるICT界隈

西内啓 × 田中幸弘 × 山本一郎 ビッグデータを語り倒すの巻(1)「ビッグデータは幻想なのか?」

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第一回「ビッグデータは幻想なのか?」(今回の記事)
 西内さん、田中さんのプロフィールはこちらから
第二回「データサイエンティストって、ぶっちゃけどうなの?」(掲載中)
第三回「パーソナルデータで広告界の地殻変動は起きるか?」(掲載中)

「誰に何を売りたいか」が明確じゃないと迷走する

田中:本来は、マーケットとかお客さま全体の利益を高める方向にいくべきところが、本来の趣旨を離れて、個別の企業の中で埋もれてしまうわけですね。何がイノベーションだと。

山本:イノベーションを求めれば求めるほど、最終的にレガシーなビジネスに帰っていくんです、という発見もできますけどね。そもそもどこがビッグデータで分析すべき領域か分からなくなってる。

西内:それは自分が色んなところで研修をしていても感じるところですね。「何かを最大化したり最小化したりするには、どうすればいいの?」っていう問いを考えた上で多変量解析を行えば、売上を増やしたりコストを下げたりするためのアイデアが見つかります。でもそれをやらずに、「とりあえず(データから)分かることって何?」というところから始めると、あまり意味がない結果も大量に読み解かなければならなくなりますよね。

よくデータマイニングの例で「オムツとビールが良く売れてるということがわかりました」みたいな話が出てきますけど、でもお店によっては別にそこまでオムツを積極的に売りたいわけじゃないし、みたいなところだってあります(笑)

山本:そりゃそうだ(笑)

西内:要するにゴールはどこなのか、っていうところが明確でないと、いくら高度な分析を重ねようがどこにもたどり着きませんよ、という。

田中:そうそう。むしろオープンデータの話で大切なのは、その先ですよね。

山本:レコメンドシンドロームってやつはありますよね。スーパーなんかで、「みかん1個買うお客さまに3個をお勧めする」とか、「牛乳350ミリリットルパックを買ってる人に1リットル勧めましょう」とか。それは無意味なんですよ。そこには「相性の良い買われ方ってなんだろう?」という、求めたい答え、ゴールが必要で。

あるお客さま像があって、「このくらいの頻度で来店をされている。その人は何のためのお店にやって来たんですか?その方にもう1000円使っていただくにはどういう調査が必要ですか?」という視点がないとビッグデータは使えないんじゃないですかね。

田中:おっしゃるとおりですね。何のためにデータの分析してるのか、ということ考えれば。

山本:でも、これを誰もやってないんですよ。「誰に何を売りたいか」をはっきりさせないままだから、八百屋で鍋とか別のもの売り始めちゃう。外食産業を見ていると「お前らは牛丼屋だろう」とか「回転寿司チェーンがなぜ」などという事態がたくさん発生します。

回転数を速くするビジネスのはずが長居するようなサービスを手掛けたり、ファミレスみたいに品揃えを狙ったりした挙句、客数が落ちて最後はまた値引き合戦に陥っております、と。気持ちはわかるけど、「あなたの商いって何?」っていう定義の問題になってきてしまいますね。そんな状態で、データ解析に突き進んだ結果、あれもやろうこれもやろうと結論付けてしまっている会社はたくさんありますよね。

第二回「データサイエンティストって、ぶっちゃけどうなの?」(2月17日更新予定)につづく。