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なぜ「CSRは、もう終わり」なのか?

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本記事は、2月27日に開講する「社会貢献型マーケティング講座」の開講にあわせて掲載します。


竹井 善昭 氏(ソーシャルプランニング 代表取締役)

僕の仕事は「日本を社会貢献でメシが食える社会にする」ことなので、CSRも一応、守備範囲に入っている。というわけで、肩書きを聞かれたら「CSRコンサルタントです」などと答える場合も多いのだが、正直に言って最近、CSRはもう終わりなのではないかと感じている。

かつては僕も盛んにCSRに関する議論をしていたし、さまざまなメディアで意識的にCSR業界にケンカを売るような持論を発信していた。何故なら、日本の社会を変えるためには、日本企業のCSRを変える必要があると思っていたからだ。

ほんの数年前まで、日本企業のCSRは学生のボランティア団体とたいした違いのないレベルのものだった。王子ネピアなど、一部の企業が先進的な取り組みをしていたが、ほとんどの企業はCSR=慈善くらいにしか考えていなかった時代で、非正規雇用のシングルマザーの時給をケチってまでNPOに寄付するようなCSRになんの正義も感じられなかった僕は、CSRも企業の成長戦略であるべきだろうと考え、「儲かるCSR」なる概念を提唱したりしていた。

2010年の秋頃の話だが、当時はCSR業界の重鎮とも言えるある人物から「最近、儲かるCSRとか言い出している輩がいるがとんでもない。CSRとは、企業の利益などとはまったく別次元のものである」などとこっぴどく批判されたものだ。

その一方で、何故か若手のNPO経営者から「よく言ってくれた」などと絶賛されたりもして、つまりあの頃は「CSRは慈善か? 成長戦略か?」という議論が成立していたわけだ。

それが2011年初頭にマイケル・ポーターが画期的な論文「Creating Shared Value」を発表し、CSVの概念を提唱。同年10月には欧州委員会も「CSRはヨーロッパ経済成長のドライビング・フォースだ」といった内容の政策文書を発表。2012年の3月には『日経エコロジー』がまさに「儲かるCSR」の大特集を組むなど、世の中の流れは「CSRは成長戦略」路線へと突き進んだ。今では「儲かるCSR」を批判する人間はもういない。

もちろん、それは望ましい方向性ではある。しかし、CSRが企業の成長戦略に組み込まれてみると、何故か「世の中、変えてやるぜ!」という熱気のようなものが失われてしまったように思える。それは、手段が目的化してしまったからなのかもしれない。

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竹井 善昭

ソーシャル・プランナー CSRコンサルタント
マーケティング・プランナーとして多数の企業の商品開発、業態開発に従事。ソーシャル・ビジネス・コンサルタントとして数多くの企業のCSR戦略、NPOのコミュニケーション戦略のコンサルティングを行う。著書に『社会貢献でメシを食う』など。