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コラム

IMCは3.0へ――日本企業に必要な「REAL MARKETING」

お客様”だけ”が神様でしょうか?

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社内の関係部署も重要なステークホルダー

加えて、見落としがちなところですが、マーケティング・ストーリーを描く上で、必ず考慮しなければならない、とても重要なステークホルダーがもうひとつあります。それは社内です。たとえば社内の研究開発とマーケティング部門が、どんなに革新的な新製品を開発しても、それを営業部門が売れると確信し、自信を持って積極的に販売しなければ、消費者の手元にまで届きません。

マーケターには、社内の各部門の判断基準や優先事項を理解して、みんなが幸せになれると確信を持てる戦略ストーリーを描き、関係者全てをコーディネートしていくことが求められます。そのためには明確な消費者のインサイトを見つけ、それを社内で共有化することが、各部門への一番の説得材料になります。

私は新卒で味の素という日本企業に入社して、初めてマーケティングに実際に携わりました。消費者調査と、精緻な理論に基づいたマーケティング・プランを作成して、インパクトのあるクリエイティブとプロモーションで消費者に購買行動を起こさせる。

消費者インサイトを徹底的に研究して知りつくすことこそがマーケティングだと信じていた当時の私にとって、大学の机の上で学んだマーケティングとは違って本当のマーケティングは社内外の様々な人々の利害が絡むもっとずっと複雑で生々しいものでした。

メーカーの営業時代はいかに流通バイヤーと人間関係を泥臭く構築して、自社の製品を採用してもらうかに日々取り組み、事業部のマーケティング担当になってからは、社内の営業に自分の担当製品を売ってもらうために何をすべきかを考えると共に、製品の安定供給のために原材料の調達から生産、物流、販売まで、製品が顧客に届くまでの一連のサプライチェーンの大切さを学びました。

2011年の東日本大震災では、かつてないほどの日本のサプライチェーンの寸断が大きな問題となりました。被害が大きかった東北地方や関東北部に生産拠点を置いていた企業だけでなく、被災した地域のメーカーから原材料や部品を調達していた企業も操業停止や減産を余儀なくされ、交通網が遮断されたことで物流が滞り、売り場に商品が届かないという事態があちらこちらで起きました。

この様に、商品が消費者に届くまでのプロセスには実に様々なステークホルダーが関与しています。

そして、これらのステークホルダーのそれぞれのインサイトを的確にとらえて、事業のオペレーションレベルで実行可能な全体最適の設計図を描くことなしに、マーケティングのゴールである「売れ続ける仕組み」はできあがりません。

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