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CMプランナー・福里真一 × 作家・白岩玄 ヒットコンテンツの企画術(前編)

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企画は理詰めで考える

福里:白岩さん原作の「野ブタ。をプロデュース」のドラマが放映されていた頃、クリエイティブディレクターの佐々木宏さんが「あのドラマが大好き」と話していましたよ。よく講演で「広告もあのドラマと同じで、人気のないものを人気者にしてあげる仕事だ」と。

そして、「よく考えると自分が好きなドラえもんも、『のび太をプロデュースだ』」と、ダジャレでウケをとっていました(笑)。広告の勉強をしていたことが、あの作品に何か影響を与えているんでしょうか?

白岩:光栄です。もともと広告が好きで、コピーライター養成講座にも通っていたほどなので、あの作品は自分の「広告好き」なところが、そのまま出ていた気がします。企画を考えるときは無意識くらいの方が肩に力が入らずに、良いとよく言うじゃないですか。「野ブタ。をプロデュース」は若気の至りと言うか、勢いで書いたようなところがあります。

福里さんは普段、どんなふうに企画を考えているんですか。

福里:まずは、その商品の広告はどんな感じになるといいかな?というイメージを漠然と持ちます。「ほのぼのとした感じ」とか、「ザラザラした感じ」とか、「ドロドロした感じ」とか、明確に言語化したものではなく、モヤモヤしたイメージをまずはもつ。で、それを一度忘れるんです。

白岩:忘れるんですか?

福里:はい。忘れた上で次はクライアントの課題に応えられるよう、企画を理屈で一つひとつ組み立てていくんです。そうやって完成した企画が、最初にモヤモヤともっていたイメージと合っていると、「あ、できた!」と思います。

白岩:面白いですね。

福里:ですから、僕の場合、企画をすべて理屈で説明できるんです。もちろん、人によってタイプが違いますが、僕はかなり理屈っぽいタイプですね。

CMキャラは冷静に突き放す

白岩:福里さんのCMには「宇宙人ジョーンズ」や「エネゴリくん」など、よくキャラクターが出てきますよね。しかも、僕がCMを見ていて感じるのは、「そのキャラクターが実際に存在すると信じている感が強い」ということ。小説の場合には、登場するキャラクターが実在すると信じ込めた方が、強い作品になるのですが。

福里:信じて…いますかね?

白岩:ENEOSのCMで、「エネゴリくん」が頭を叩いたらほこりが出てくるというシーンがあるじゃないですか。すごい笑ったんですけど、頭の中で具体的なイメージができているからこそ、発想できるアイデアじゃないかなと思ったんです。

福里:むしろ、どちらかと言えば、キャラクターのことは信じていないかもしれないですね。すごく冷静に見ている気がします。「エネゴリくん」がかわいいとか、あまり思わないようにしていて、「きちんと、CMをヒットさせろよ!」と、かなり厳しい目で見ている感じですね。

白岩:でも、自分が全く存在を信用していないと、キャラクターを生み出せない気がします。キャラクターを生み出した後に、突き放しているんでしょうか?

福里:うーん、なぜ僕のつくるCMにキャラクターが良く出てくるかと言うと、CMはシリーズで続いていかないと蓄積されないと思っているんですね。そして、シリーズ化するためには、CMの目印が必要となる。で、その企業とか商品に一番似合う目印はなんだろう…と考えた結果、キャラクターも生まれてくるので、キャラクター愛からスタートするわけではないんです。

白岩:そこも、理詰めなんですね。

福里:僕自身、40代の普通のおじさんですが、例えば僕もCMを「かわいい!」とか思いながら、熱心に見ているわけではないですし。普通、CMって「これの、どこが面白いの?」みたいな、どちらかと言うと否定的な気分で見ていますよね。なので、CMのつくり手も、CMの受け手の人たちと同じ温度感で、CMに登場する人たちに接したほうがいいんじゃないかと思うんです。

白岩:否定が入っていたほうがよいということですか?

福里:否定というか、信じないというか…。

さっき、白岩さんがおっしゃったことで言うと、僕は信じていないからこそ、リアリティが出てくる気がしています。「エネゴリくん」をかわいいと思わないからこそ、なるべくリアルの中で描いて、多くの人が共感できるような存在にしようとする。それは、「宇宙人ジョーンズ」であっても、「こども店長」であっても、同じスタンスで考えている気がしますね。

白岩:そういう企画の仕方って、クリエイターの方たちの中で一般的な方法なんですか?

福里:どうなんでしょうね。もっと愛してつくっている人の方が多いかもしれません。

白岩:そういうところも、『電信柱の陰から見てるタイプ』ならではの発想法なんでしょうか。僕は『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』を読んで、自分は電信柱の陰に隠れていたいんだけど、でもみんなの輪の中にも入りたくて、電信柱の前に出てきているタイプだなと。でも、みこしを担ぐときに真っ先に裸になれるような人ってすごいな、と思います。

福里:なんにでも距離をとる、という意味では、確かにCMの登場人物たちとも距離をとるタイプかもしれませんね。

<後編へ続く>

(本文中・敬称略)

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