スダラボ視点のカンヌ観察日記(2)

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前回の記事スダラボ視点のカンヌ観察日記(1)ーーそれぞれの「ジャッジ!」を持つべし。または、ユーは何しに南仏へ?」はこちら

博報堂セミナーに見る2024年の広告の仕事。または、我々は明後日どこに住むか?


博報堂 i-ディレクション局 シニアクリエイティブディレクター
須田和博

6月16日(月)朝

ニースに着陸した我々は、地元のバスを乗り継いでコートダジュールをウロウロしていた。カンヌに来たのはこれで4回目だが、過去3回との違いは、今回は「出張ではない」ということだ。「自腹」と書くと「悲壮感」が漂うが、「バカンス」と書くと「多幸感」が湧いてくる。

ニースからややイタリア寄りにある「ヴィルフランシュ・シュル・メール」という港町は、本当に居心地がよかった。潮の香りだけをツマミに美味しいロゼを飲み、海に面した古い要塞を散策し、夜には山々から海に向かって流れる「森の香り」を含んだ風を深呼吸し、夜明け前には本当に美しい声で鳴く「鳥の歌」を聴く。

ただし、問題があった。フランスの鉄道が無期限のストに突入しており、カンヌへ向かう鉄道が1本も運行していないことが、移動する直前に判明する。さすが労働者が戦って自由を勝ち取った国だけあって、「ストは世間様に迷惑がかかるから」などという遠慮は一切ない。文字通り、ストライキ=叩きつけるように、駅は無人であった。鉄道ならば1時間でカンヌに着くということだったが、急遽、地元の市バスを2系統、ニース中心街をトラムと徒歩で移動して乗り継ぎ、のべ約3時間かけてカンヌに向かうことになった。

日曜の午後16時に博報堂のセミナーが開催される。レジストリー込みで、これに間に合わないと、かなりヒンシュクである。幸いにも、開演30秒前にすべりこみで間に合った。日本でもカンヌでも、ギリギリ行動は変わらないんだなと、我ながら妙に納得する。

キムケンさんとハセベさん(編集部注:木村健太郎さんと長谷部守彦さん)の「かけあい漫才式」セミナーは、弊社ながら、わかりやすかった。自分にとって「南仏」といえば、ジャン・リュック・ゴダールの「気狂いピエロ」であり、「気狂いピエロ」といえば「ここは、ローレル&ハーディー風にやるんだ!」の名台詞だから、コレは正しい。

「2024年のエージェンシー像」と題したセミナーは、まず過去10年のカンヌ代表作のクリップに、その年のキーワードを大きく載せた、走馬燈のようなヒストリカル・ムービーを上映し、ここに至る経緯を高速で振り返った後、全体を3つの「キーワード」と4つめの「結句」で、クリアに構成していた。 今すでにある予兆を例示しながら、「これからの10年で広告会社はどう変っていくのか?」を語った。いわく、

1)職能=ハイブリッド・エキスパタイズ、へ
→より多様なエキスパートの複合が必要になる

2)組織=ユナイテッド・ベンチャーズ、へ
→起業家精神に富む複数の身軽な存在の集合になる

3)事業領域=ライフ・デザイン、へ
→認知獲得や行動変化を起こす仕事から、社会生活そのものを改善する仕事へ

結び)ピープルズ・エキスパート、インベンティング・ザ・フューチャー。

セミナーの結びの後に、流星雨に打たれるティラノサウルスREXのかっこいいイラストを映し、「広告業界はよく恐竜に例えられる。恐竜はなぜ滅びたか?それは変化に対応できなかったから」とコメントする箇所があった。

それを聞きながら、ふと「恐竜は滅んだのでなく、鳥になった」という学説を思い出した。夜明け前に美しい声で鳴く鳥や、チュンチュンと心和ませてくれるスズメ、キモチ良く空を舞うカモメ、その辺をウロウロしている鳩。これらすべてが、もともと怖ろしい巨大恐竜だったのだと想像すると、進化はとっても楽しいと思えてくる。広告会社の未来も、そのくらい多様で、小回りが効いて、かつ「かわいく」ても、いいじゃないか!

爬虫類の後、地上の支配者となった哺乳類には空を飛べるものは少ないが、滅ぶしかなかったはずの恐竜が鳥に変身して大空に散らばったという想像は、なんだか我々の未来も楽しそうに思わせてくれて、ワクワクさせてくれる。

「エンジョイ・チェンジ!」「バイバーイ!」と言って、ヤング・キムケンと老師ハセベは爽やかに舞台ソデに引いて行った。幕。拍手。おつかれさまでした!

PS>
セミナーの中で「ライフ・デザイン」の事例として、我らスダラボの「ライスコード」が紹介され、その流れでビデオの中の白衣の須田を、なぜかハセベさんが「He is Super WOTAKU.」と言った。『ジャッジ!』を見た直後だったので、「あー、しまった!ラムちゃんのTシャツ持って来るんだったよー!」と後悔した。後で聞いたら完全なアドリブだったそうな。謎のシンクロニシティ発生中。

 【関連記事】博報堂 須田和博氏による自主開発型クリエイティブ・ラボ「スダラボ」発足

(つづく)

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