自分たちの居場所を、自分たちでつくる
リズムデザインでは、設計のスタディ(検討)を進める際、一般的な設計事務所に比べると、とても多くの模型をつくります。
「プランを変更するたびに、すでにある模型を改造せずに履歴として残し、新しい模型をつくる」ということを事務所のルールとしているので、例えば一つの住宅が完成するまでに、多い時は100個近く、少なくても40~50個の模型をつくります。
私たちがたくさんの模型をつくる目的は、単に設計をより良いものにしていくためだけではなく、「プロジェクトに関わる全ての人たちとの対話のきっかけを探している」といったほうが近いかもしれません。建築の専門者ではないクライアントや一般の方々と対話するには「模型」が一番分かりやすい。打ち合わせのたびに、多くの模型と図面を前に、「ああでもない、こうでもない」と議論します。
設計プロセスで制作した模型。施主と情報共有するため、模型は分かりやすい言葉(タグ)で説明されている。©rhythmdesign
2011年に完成した「飯塚の住宅」というプロジェクトでは、設計プロセスのかなり早い段階で施主自ら図面を描くようになり、「施主=委託者、設計者=受託者」という線引きを越えて、一緒に設計を進めていきました。この住宅の完成間際に、施主が「家づくりの過程を共有したことが、家庭や仕事にも良い影響を与えてくれた」と話してくれたことは、とても嬉しい出来事でした。
2011年に完成した飯塚の住宅。周辺の街のルールを室内まで反復するように計画した。©koichi torimura
建築が出来上がる過程を共有し(時には実際に現場でつくる作業も一緒にやります)、設計の楽しさや苦しさ(笑)も共有する。そうした体験を通して、自分たちが暮らす場所の成り立ちを知ることで、「これこそが自分たちの居場所だ!」という感覚を持ってもらえたらと思っています。
また現在、リズムデザインで進行するプロジェクトの50%は、古い建築を残す(既存の構造躯体を残し、意匠・構造・設備などを更新する)リノベートのプロジェクトです。
身近な関わり合いの中から、これまでに10数棟のリノベートに関わってきました。賃貸集合住宅や複合施設、ホテル、オフィスなど、規模や用途は様々で、現在もその多くの建築に継続して関わっています。
毎年、「今年はどのように手入れしましょうか?」という話を繰り返しながら、建築の生かし方を一緒に考えていく様は、建築家と施主との関係というよりも、庭師と施主のそれに近いのかもしれません。最近では、それぞれの地域に存在する建築を見守り、生かし方を考えることは、その地域で活動する建築家(技術者)の責任でもあるな、と感じています。
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