ターゲットを狙うのではなく発見する
次に、仮説の前提となるターゲット設定です。マスマーケティングでは当たり前のように年齢、性別、職業のようなデモグラフィックを設定することになっており、どんな戦略プランニングシートでもクライアント側が指示しているはずです。
従来のマスマーケティングのターゲット設定というのは、繰り返し改善して運用するモデルではなく、もっとも数が多いと思われる市場を的の中心に狙うという考えなので、実際はそのターゲットのデモグラフィックが正しくなくても機能していました。デジタルテクノロジーによってデータが増えることで、この「ターゲットのみを狙う」という精度は上がり、ターゲット効率と言う点では確かに無駄がなくなったといえます。
ただし、デジタルマーケティングにおいては、ターゲットのみを効率的に狙うために長期的に運用し、改善しながら最適化するという方法が可能なので、このターゲット設定の前提が間違ってしまうと獲得コストだけが上がって最終的な効果を高められないということが起きてしまいます。
デジタルマーケティングにおいてはむしろ、マスマーケティング時代のようにあらかじめ設定された仮説の正しさを「検証する」のではなく、その商品コンセプトやメッセージの潜在的な「可能性を発見する」ために使う方が適切のように思います。
最近、ターゲットのデモグラフィックの精度を高めるのではなく、商品そのものや記事などのコンテンツに対する履歴や反応からオーディエンスの設定を最適化していくテクノロジーがデジタルマーケティングに登場しました。
一見手の込んだリターゲティングとレコメンドエンジンのようですが、ポイントは仮説設定されたターゲットを機械学習によって追いかけるのではなく、実際に関心や興味を持ち行動を起こしてくれた人をターゲットとして最適化していく点です。
リターゲティングのレコメンド広告といえばCriteoが思い浮かびますが、自分はアウトブレインが掲げている「コンテンツディカバリープラットフォーム」という考え方に共感します。彼らのようなテクノロジーが面白いのは、ブランドや商品が持つ潜在的な可能性を発見してくれるアルゴリズムを持ち、従来のマスマーケターが出来ないような一定の仮説に縛られない、生の消費者行動をベースにした需要の開拓ができることです。たとえば、それは商品を仮説によって特定のターゲットに売り込むのではなく、関連する商品やコンテンツが持つ価値を潜在的なターゲットに気づかせ、興味を持つ人たちを連鎖的に連れてきてくれるものです。
このような発見型のテクノロジーは、今はまだコンテンツのレコメンドエンジンやECの顕在化したニーズの刈り取りなどの、一部のマーケティング施策だけに活かされていますが、今後はデジタルマーケティングの主流になっていくのではないかと思っています。
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