メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

気鋭の社会学者がアイドルグループのプロデュースをはじめた理由(ゲスト:濱野智史さん)

share

社会学者、批評家であり、かつアイドルグループ「PIP」のプロデューサーとして活動する濱野智史さん。常に冷静な視点と分析で批評をしてきた気鋭の社会学者は、なぜ批評される側のアイドルをプロデュースするに至ったのか? そこには、自らがAKB48にどハマりしたという実体験と、売れないアイドルのセカンドキャリアを憂う“親心”があった——。

今回の登場人物紹介

左から、権八成裕(すぐおわパーソナリティ)、中村洋基(すぐおわレギュラーゲスト)、澤本嘉光(すぐおわパーソナリティ)、空井美友(アイドルグループPIPメンバー)、橋田 唯(PIPメンバー)、小林希望(PIPメンバー)、濱野智史(批評家、社会学者、アイドルプロデューサー)※本記事は2月6日放映分の内容を収録したものです。

AKB48は宗教である!

澤本:今回のゲストは、批評家で社会学者の濱野智史さんです。

濱野:よろしくお願いします。濱野です。

前田敦子はキリストを超えた:〈宗教〉としてのAKB48 (ちくま新書) 濱野 智史 

澤本:濱野さんは『前田敦子はキリストを超えた-<宗教>としてのAKB48-』という著書を出されていますよね。

権八:すごいタイトルですね、これ笑。

濱野:これは3年ほど前に出して、炎上しました。宗教という言葉が付いていますが、これはぼくがあまりにAKB48にハマりすぎたことに由来しています。しかもハマりだしたのが2011年ぐらいからなので、そんなに前からではないんですよね。

澤本:ちょっと遅めですよね?

濱野:はい、むしろ最近です。AKB48ができたのは2005年なので、ぼくは新規というか、後からなんですけど、あまりにハマりまして。これは凄いと。気持ちが高まりすぎて、本にしたらこんなタイトルになっちゃったみたいな。そういう本です。

権八:心の高まりがよく現れたタイトルですよね笑。

中村:この本は凄くハマっている自分の視点と別のもう1人、批評家で社会学者としての立場から見た濱野智史という二部構成のようになっていますよね。ちょっと多重人格的な感じで。

濱野:まさにそうです! 自分で自分を観察して、いかにAKB48の仕組みが自分をハマらせているのかについて分析しています。普通、アイドルってほとんどの人はバカにしてるじゃないですか。

権八:「はい」って言いにくい笑。

濱野:ぼくも2011年にハマりだすまでは完璧にバカにしていました。なにCDを何枚も買ってんだ、アホかと。そんなぼくがハマったきっかけはAKB劇場です。劇場で見て、「これをずっとやっているのは凄い」と。テレビに出るわけでもなく、ずっと劇場で目の前のお客さんに向かって100%全力でやっているということが、「凄いな」と。

権八:それは“ひたむきさ”みたいなことですか? 努力というか。

濱野:うーん、なんでもいいんですよね。たとえば、アイドルって口パクが当たり前ですよね。AKB48もよく批判されていますけど、テレビに出しちゃえば本当に歌がうまくなくても、声を別に撮っておいて。口パクで歌っても、「かわいいコがいい歌をうたってる!」と言ってみんなCDを買うだろうと。

澤本:確かに、そうですね。

濱野:だからアイドルは、メディアが脚色してもバレない、“偶像”という言葉のアイドルなんです。本質的にはたいしたことないのに、崇め奉られているのがアイドル。AKB劇場へ行くと、ほぼ完璧に口パクですけど、そのかわりダンスは全力なんですよ。また、面白いことに全員が全力というわけでもないというか。

権八:そうなんですか!?

濱野:全力といっても人によって違うというか。たとえば、この子は汗っかきだとか、この子は汗をかかないけど髪は振り乱しているタイプだとか。つまり、テレビみたいに都合のいいところだけ抜くわけではないので凄い情報量になるんですよ。

澤本:なるほど。

濱野:しかも250人しか入らないから凄く狭い。そして、ステージまでの距離が近い。物凄い情報量で、それを2時間みっちりやる。そうすると、嫌でも誰か1人を好きになっちゃうんです。AKB48の場合は1チーム16人なので、目の前に16人の女の子がワラワラ出てきて踊られると、はじめは興味なくても「あれ、この子は意外といいんじゃないか?」と。それでドルオタ(アイドルオタク)用語でいう“推しメン”が決まるわけです。あ、推しメンというのは、推しているメンバーという意味なんですけど。

権八:はい、それなりにわかります笑。

濱野:それが「凄いなぁ」と思って。で、いざ一回ハマっちゃうと、もう自分のほぼ全人生が推している子を中心にまわりはじめていく。

一同:えー(驚き)。

濱野:というか、そうでないとやり切れないというか、なんて言うんだろう…。納得いかないというか。むこうも本気でやっているんだからこっちも本気でやろうみたいな。よくわからない義務感に駆られていく笑。

一同:爆笑

濱野:これって宗教っぽいと思うんですよ。それでぼくはハマってしまい、今度は自分でもアイドルをプロデュースしようというか、つくり出してしまおうということを去年からはじめている、という流れなんです。社会学者で批評家なのに、アイドルを自分でプロデュースしはじめちゃったという。

澤本:そこですよ。問題は、そこですよ。

次ページ 「既存のアイドルの仕組みに限界を感じていた」へ続く