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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

色部義昭×八木義博「ロゴから公共空間まで手がける、グラフィックデザイナーの思考法とは?」

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一週間で消えるポスターでも長期的な視点で作りたい

色部:デザインスタジオnendoの佐藤オオキさんの作品集『nendo:in the box』は、驚くべき精度で作られたインテリアの模型を撮影して本にしたものです。模型というコンテンツに合わせて、本のサイズそのものを小さくしました。nendoでは色をマテリアルとしてインテリアを作ります。そこで、この本もプロジェクトに使われるキーカラーを使い3色展開にしています。本がスタジオに陳列された時にインテリアになるイメージで作りました。

八木:色部さんは1回分解して、構造からデザインを考えていきますよね。本を単に読むものではなく、建築的に捉えているようです。

色部:本は写真や文字などの情報を収納しているビルみたいなもの、というイメージです。

八木:だからそういうアイデアが出てきて、長期的に使えるデザインになるんですね。広告の仕事の多くは数カ月で無くなってしまいます。でも、デザインには長期的な視点が必要です。3年続けているJR東日本の「行くぜ、東北。」は、ポスターを作るというより、景色を変えたいと思って取り組んでいます。

色部:「行くぜ、東北。」は何度も目にしています。一つの世界観をつくりつつも、たまに意外性もあったりするのがいいですね。もう、ある種の公共性を持った存在になっているように感じます。いつも楽しみにしています。

八木:たとえ1週間で消えるポスターでも、積み重なっていくから、長期的な視点は常に持っていたいと思います。そうすることで次の打ち手を思いついたり、広告の質ももっとよくなるかもしれないと思っています。

色部:広告は次の展開につなぐ布石をうまく打ちますよね。それは僕も同じで、しつこく本の意味を考えて、ただ読まれて終わるだけではない何かを残そうとします。「行くぜ、東北。」のキャンペーンにも、その粘りを感じます。

八木:最近ではローカル線をテーマにしたポスターとTシャツを作りました。写真の撮り方もがらっと変えています。

色部:始まった最初はグラフィック主体だったのに途中から写真メインになったのはなぜですか?

八木:スタート時は震災直後で、節電モードで暗い雰囲気の中、「東北の景色ってきれいでしょう?」みたいな写真を撮るのは違うなと思いました。だったら、ガツンと頭を殴られて景色が変わるような、元気になるポスターにしようと思ったんです。今見たら自分でもよくやったなと思います。あの時だったからできたんでしょうね。

色部:新しいものが出てきたなと感じたことを、鮮烈に記憶しています。

次ページ 「街の空気を変える「ふりかけ式」の都市計画」へ続く