<登壇者>
- タニタ 代表取締役社長 谷田 千里 氏
- スマイルズ 取締役副社長 松尾 真継 氏
社員の理想や周囲から反対されるところから新規事業は生まれる
「成熟社会、日本でいかにして新市場を開拓するか?『イノベーションを生むマーケティング経営』」をテーマに、新市場開拓で成功を重ねる2企業のトップである、タニタ代表取締役社長の谷田千里氏とスマイルズ取締役副社長の松尾真継氏を迎え、新規事業を成功させるための考え方や日本市場の可能性を語ってもらった。
谷田氏は、「現在タニタは、『健康をはかる』から『健康をつくる』をコンセプトに事業領域を拡大している」として、事業の3つの柱を説明。
1つ目はタニタ食堂を中心とした新しい「食」のソリューションの提供。2つ目は異業種とのコラボレーションによる「タニタ・メソッド」の普及。タニタ・メソッドとは、タニタが提案する健康的な食生活を反映した弁当やインスタントみそ汁などのコラボ商品の開発で、最近では食品以外の領域にまで広がっているという。
3つ目の柱はICTの技術を使い活動量計や体組成計などからユーザーの活動量、体組成、血圧のデータをクラウドサーバー上に転送・蓄積し、個別に健康アドバイスを提供する仕組みである「タニタ健康プログラム」。医療費削減効果が期待できるため、自治体などの健康推進活動にプログラムを提供している。
一方、食べるスープ専門店「Soup Stock Tokyo」を展開するスマイルズは、現在、世界一キュートなネクタイブランドを目指す「giraffe(ジラフ)」や、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON(パスザバトン)」も展開している。松尾氏は「世の中の体温を上げることができるようなブランドを作っていきたいという思いから新規事業を立ち上げている」と話した。
同社が新規事業を立ち上げる際に重視していることは、サービスを提供するシーンやストーリー。例えば、4月24日にオープンしたファミリーレストラン「100本のスプーン FUTAKOTAMAGAWA」のコンセプトは「コドモがオトナに憧れて、オトナがコドモゴコロを思い出す」。自分の家族を連れていきたくなるファミリーレストランを目指し、お子さま連れのママたちのランチタイムや親子デート、誕生日のお祝いディナーなど家族のさまざまなシーンで楽しんでいただける空間や料理を提供するという。
松尾氏は「社内にマーケティングやトレンドという言葉は一切ない」と話したうえで、「大切なのは自分がそのサービスを使いたいかどうか。社内で自分の理想や疑問を話し、それに共感する社員と話しているうちにビジネスの種ができていく」と、新規ビジネス誕生のプロセスを語った。
それに対して谷田氏は、「新規事業の提案では、周りに反対される方がうまくいくと思っている」と述べた。新規事業は誰もやったことがないことへの挑戦。それだけに、「周りの反対は誰もやったことがないという証。タニタ食堂を始めた時も、メーカーがサービス業はやらないだろうと思われていたので踏み出した。弊社では、反対されることを率先してやっていく、という形で新規事業が生まれている」と語った。
これに対して松尾氏は「共感の深さも大事だと思う」と発言。以前谷田氏から、「たとえ共感する人が少なくても、個人的に非常に苦労していることをなんとか解決したいという思いで開発したものは、同じ悩みを抱える人たち大いに受け入れられるはずで、そういうアイデアはすごくいい商品になる」という話を聞き、大いに共感したことを語った。
谷田氏は「尖ったアイデアを事業として進められるかどうかは馬力の問題で、とにかく商品化することが重要。話だけではイメージしにくいものも、実際に商品化して見せれば、“私もそういうものがほしかった”という気づきが生まれ、先ほど松尾さんが言った、共感の深い方から広がっていくと思う」と述べた。
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