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コラム

アンバサダー視点のススメ

私たちは、良い広告を作るだけでなく、広告自体を人々にとって良いものにするための努力をすべき

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広告を世の中にとって良いものにする努力

実は私は彼女のプレゼンを東日本大震災の直後である2011年5月にも聞くことができ、その時にも同じメッセージを受け取っていたのですが、今回はタイミングがタイミングと言うこともあり、より重くその問題提起を受け止める結果になりました。

広告という存在が、読者や視聴者にとって邪魔者であるという確信犯的な潜在意識があるからこそ、ノイズのような広告手段ばかりに力を入れてしまうし。効率性を追い求めるあまり、どこまでも同じ人を追いかけて多くの人に気持ち悪がられても、それを気にせずモノを買ってくれるごく一部のターゲットのために、他の人の信頼を失っているのではないか?という問題提起は、実に核心を突いていると言えると思います。

ステマやノンクレジット広告手法は、この問題の典型的な現象と言えます。「広告」と明示することこそが、読者や視聴者に対してネガティブなメッセージを発してしまうと言う潜在意識があるからこそ、それを隠したい、と思ってしまうわけです。

広告が邪魔者扱いされて無視されるものだから、それでも見てもらえるようにもっと邪魔して強制的に表示すれば良い。そんな考え方で広告を作っていたら、広告はますます世の中から邪魔者であり「悪」の存在になってしまう。

私たちがやるべきは、広告を「悪」の存在にしないように、広告をもっと世の中にとって良いものにしていくための努力なのではないか?というのが広告業界出身であるシンディ・ギャロップさんの問題提起だと受け止めています。

広告を広告であると胸を張って伝え、その広告を広告と分かっても読者や視聴者が喜んで見てくれて、広告を見た読者や視聴者が喜んで行動してくれたり、企業のファンになってくれるという自信があれば、ステマやノンクレジット広告手法などに手を出す必要は全くありません。

私たちが参考にするべき象徴的な事例は「祝!九州 九州新幹線全線開CM」でしょう。このCMは、2011年3月の公開後まもなく東日本大震災が起こり公開中止となりましたが、公開中止後YouTubeにアップされた動画が話題になり200万回以上再生され、テレビCM放映再開を望む声が多数集まる結果になったことで有名です。

このCMは、九州新幹線が開通する喜びを九州の人達の中で共有するだけでなく、大震災で沈む日本中の人達の心をつなぐ一つのシンボルになりました。このCMは邪魔者としてスキップされる存在ではなく、ネットでわざわざ検索されて何度も何度も同じ人に積極的に閲覧される広告になったのです。

当然、これと同じ事例を再現しようと思っても誰も二度と再現できないわけですが。広告にはそういう力がある、というのを今一度私たちは考えるべきだ、ということは間違いなく言えます。

このCMをつくっている人達が、広告というものが読者や視聴者に邪魔なものであって、スキップされるのが当然だから強制的に5秒待たせるものであって、と思っていたら、こんな感動的なCMを作ることはできなかったはずです。

九州新幹線の開通をみんなで喜びたい、喜びを皆で共有したい。その手段が広告だった、という順番だったからこそ、これほどまでに良い広告ができあがったのだと思います。

私たちは、単なる良い広告を作るだけでなく、広告自体を人々にとって良いものにするための努力を、もっともっとすべき。

あなたは、この言葉を聞いてどう思いますか?


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