【受賞インタビュー】「行くぜ、東北。」/慶應義塾大学「PEARL」電通 八木義博さんチーム

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いつものチームで、ここカンヌで、受賞できたのが嬉しい

デザイン部門において、「行くぜ、東北。」でゴールドを、慶應義塾大学「PEARL」でシルバーを、その他アド・ミュージアム東京やHondaでも受賞した電通の八木義博さんのチームに聞く。

 

左から、Creative Power Unit デザイナー畠山大介さん、電通 アートディレクター八木義博さん、PEN. デザイナー木村泰治さん、電通 コピーライター筒井晴子さん。

——受賞おめでとうございます。八木さん、贈賞式の後「嬉しいけれど、悔しい」と言っていましたね。それはどういう意味ですか?

八木 嬉しかったのは、東京駅に貼られている、皆さんの目に日々触れる仕事で受賞できたことです。「行くぜ、東北。」は5年間息切れしそうな中でやってきているので、チームの皆も喜んでいます。

悔しかったのは、手が届かなかった作品があったことです。僕たち広告の作り手は、普段表に名前の出ることのない人間です。デザイナーやコピーライターはもちろん、撮影場所を探すコーディネーターやプロデューサーも、皆本当にしんどい思いをしてやっている。

本当は、日本のキャンペーンがカンヌで獲らなくてもいいのかもしれないけど、僕はこういう広告賞をチームの皆がほめられる場所として積極的に活用したいと、今年はいろんなチームを連れてきたんです。

そこで受賞の喜びを共有して、1年間やってきたことを確認し合いたかった。もうちょっと、夢を見ていたんですけどね(笑)。

——目標はさらに高かったんですね。チームの皆さん、受賞の感想は?

木村 僕も、嬉しいけれど悔しいです。僕はシルバーを受賞した「PEARL」のデザイン担当なので、壇上に登れない悔しさを味わいました。贈賞式では、周りの空気が勉強になります。シルバーとゴールドはこんなに違うんだ、ということをこの場で感じないと、シルバーで満足して終わってしまいますから。

筒井 同じゴールドでも、すごく大きな拍手があるものもあれば、そうでないものもあります。こんなに差があるんだ、というのは現地に来ないとわからない。満場一致で歓声が上がるような、カッコいいゴールドの獲り方をしたいです。

畠山 よく「壇上からの景色」と言いますが、実際にはライトがまぶしくてよく見えなかったです(笑)。「行くぜ、東北。」は決して賞のための仕事ではありません。純粋に東北に人に行ってもらいたい、という気持ちで積み重ねてきた仕事で獲れたことを嬉しく思います。

——「行くぜ、東北。」は震災直後の2011年は非常に文脈が理解されやすいキャンペーンだったと思います。4年経った2015年は、どのようなアプローチを取ったのですか?

JR東日本「行くぜ、東北。」

八木 基本的に、「実際に行くこと」が最大の復興支援。「行くぜ、東北。」というかけ声も変わりはありませんが、「東北を旅する乗り物が素敵」ということも、東北に行くモチベーションにならないかと考えました。ローカル線というデイリーな物を、角度や視点を変えて斬新に登場させよう。それがアイデアのスタートです。

ヒーローって、大体カッコイイ乗り物に乗っていて、007のジェームス・ボンドも、仮面ライダーも大抵乗り物とともにフィーチャーされますよね。僕らにとって乗り物というのは、とても近しい、パートナーのような家族のような存在で、それは本質的に国を超えても変わらない。そこが評価されたのではと思っています。

——チームを大事にされているというお話がありましたが、八木さんは普段チーム運営でどんなことに気を配っていますか?

八木 アートディレクターは自分で手を動かすのが美学、みたいな風潮がありますが、その仕事をもっと大きな世の中にインパクトを持つ“かたまり”のようなものにしていくには、チームの力が必要です。複数の人のアイデアを入れていくことで、自分が予想していなかった方向に広がりが生まれます。

結果的にどちらの方向を選んでもいいのですが、いろんな案が出た上での選択と、最初からCDの一案では深みが違う。それに、僕がはじめから決めてしまうと、皆がいいクオリティを追いかける過程に参加できなくて面白くない。

だから、皆がモチベーション高く参加している状態をいかにつくり、その中でどうアウトプットのクオリティを高めるかにチャレンジしています。

僕たちの打ち合わせでは、たとえば畠山くんが「それ、面白いですね!」とアクセルを踏む役割をすれば、筒井と木村さんが「やる意味があるかな?」と懐疑的な視点でブレーキを踏む。その役割が逆になったり、つっこんだり、流動的に皆が意見を交わす。

そういういいバランスで最終的にいいアウトプットに結びついていると思います。性格的に、一人でコツコツやるのが寂しい性分ということもあるんですけど(笑)。

アート&コピーじゃないですが、コピーライターの筒井には、普通はコピーライターに聞かないようなことも相談します。職種関係なくチーム全員がアイデアマンだと思って、アイデアや世界観という案のもっと手前の部分から、チームで一緒に考える時間を大事にしています。

——いいチームですね。来年もこのチームでチャレンジしますか?

八木 まだまだ僕としては不満もありますけどね(笑)。僕のチームメンバーへの口癖は「次があると思うなよ」なので。次があると思ったらダメなんですよ。それは、今進めている仕事をないがしろにすることですから。

東北新幹線も、毎年更新している仕事なので、次があると決まっているわけではありません。常に緊張感を持って、チームメンバーを甘やかすことなく(笑)、前に進んでいきたいと思います。

——今後のチームのご活躍、期待しています。本当におめでとうございました。

「PEARL」は、2016年に慶應義塾大学経済学部で始まる4年間一貫して英語で経済学を学ぶ新しいプログラム「Programme in Economics for Alliances, Research and Leadership」の略。成長していく真珠をモチーフにVIをつくり、ロゴ、ブランドブック、ツール、Web までトータルにディレクションした。


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