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コラム

アンバサダー視点のススメ

メディアのバナー広告を買うのと、自分たちでメディアを作るのはどちらが安いか?(上・B2B編)

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B2B企業の自社メディア代表事例

日本におけるB2B企業の自社メディア作りで、非常に歴史がある代表的な事例といえるのはNECが運営しているビジネス情報サイト「WISDOM」でしょう。

NECがターゲットとしているビジネスマンにとって役立つニュースを掲載しているビジネスメディアです。

WISDOMが開始したのは2004年。オウンドメディアという言葉も、インバウンドマーケティングという言葉も無かった時代。ブログがようやく日本でも注目され始めた頃で、企業自身がメディアサイトを自ら運営するという発想がまだまだ企業担当者の中に少なかった時代です。

実際にはWISDOMを始めるきっかけになっているのは2000年頃から運用されていたB2B向けのメルマガサービスだったそうですから、NECにおいてはこうした顧客への情報提供が自らのビジネスにつながるという感覚が昔からあったということが言えるかもしれません。

WISDOMでは、NECの宣伝としての記事を量産するのではなく、お客さまにとって役立つコンテンツを作ること、お客さまとコミュニケーションする目的でコンテンツを作ることにこだわってコンテンツ制作をされているそうで、その結果、75万人を超える会員が登録する一大ビジネスメディアに成長しています。

実際にNECでは、自社のカンファレンスへの集客への貢献度をバナー広告などの広告手段とWISDOMで比較した結果、WISDOMが非常に優秀なコスト効率で集客に貢献することができているというビジネス成果も確認されているそうです。

同じようにB2B企業が運営するメディアの成功事例として注目すべきは、グループウェアを提供するサイボウズが運営する「サイボウズ式」という情報サイトでしょう。

こちらのサイトもWISDOMと同様、サイボウズの商品についての記事はほとんど存在せず、サイボウズがターゲットとしているビジネスマンにとって役立つ情報が提供されている情報サイトになっています。

このサイボウズ式が開始したのは2012年。当時、サイボウズのプロモーションを担当していた大槻さんが、オンラインのIT関連の情報は「個人向け」や「コンシューマー向け」の「ツール」を中心とした情報が多く、「チーム」による「ビジネス」や「コラボレーション」という軸での情報は少ないのではないか、という問題意識から開始した情報サイトです。

サイトを開設した直後は大槻さんを中心にサイボウズのメンバーが記事を書いていましたが、今では「脱社畜ブログ」で有名な日野瑛太郎さんなどのブロガーや外部ライターにも記事執筆を依頼する形で運営されています。

サイトのPV自体は月間20万~40万PV。一般的なニュースサイトに比べると少ないという印象を持たれる方も多いかもしれませんが、B2Cと異なりB2Bにおいてはそもそも不特定多数の読者に読んでもらう必要はありません。

サイボウズがターゲットとしている顧客を中心にしたPVであることが重要であり、コピペ記事を量産して批判を集めたバイラルメディアのように、いたずらにPVを増やす必要はないのです。

実際に、サイボウズ式は単純にサイボウズの製品サービスへの誘導口としても機能しているだけでなく、サイボウズのことを知らなかった人にサイボウズのことを知ってもらえる場所として、採用やブランド認知向上に非常に大きく貢献しているそうです。

もちろん、自分たちでメディアを作るというのは何でも良いからメディアを作れば良いという話ではありません。メディアを継続して運営するには人手もコストもかかります。

中途半端な誰も見ないメディアを作るのに中途半端に資金を投下するぐらいであれば、最初から広告を通じて見込顧客を獲得した方がよっぽど効率的というケースも多々あります。

ただ、B2B企業においては、いたずらにPVを追い求めたり、ターゲットではない人のコンタクト情報をいくら集めても意味がありません。一方で、一件あたりの成約単価が大きいことを考えると、自社のメディアで本当にコミュニケーションを取りたい見込顧客とコンタクトが取れれば、実はそれが数名であっても十分に元が取れてしまうケースもありえるのです。

どんな企業でも自らメディアを運営すれば良いというわけではありませんが、企業自らが本気でメディア作りに投資すれば、NECやサイボウズのようにビジネスに貢献するメディアを企業自身が作ることも可能な時代になっているという点は、ぜひ知っていただければ幸いです。

下・B2C編はこちら


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