コラム

全広連金沢大会特集 五感でつかむ金沢の文化

新幹線開業の成果は長期視点で――金沢広告協会・高澤基会長(北國新聞社代表取締役社長)

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広告界最大級のイベント「全日本広告連盟大会」が今年5月、北陸新幹線開業に沸く金沢市で開かれ、全国の広告関係者をはじめ1400人が来場しました。広告界の業界団体である公益社団法人全日本広告連盟(全広連)の主催によるもので、今年で63回目を迎えます。
この連載は、全広連と宣伝会議とのコラボレーションの一環で発行した新聞「アドバタイムズ特別号」の記事の一部を転載するものです。新幹線開業で注目される北陸経済や、金沢の広告界・クリエイティブの今を紹介します。

工芸都市金沢をアピール

東京―金沢間はこれまで3時間50分程度かかっていましたが、新幹線では最短で2時間28分、実に1時間20分程度短縮されました。金沢―大阪間、東京―大阪間も鉄道で2時間半程度。気軽に来ていただけるようになったと思います。

北陸新幹線の実現には、実に50年の歳月を要しました。最初に新幹線の必要性を当時の佐藤内閣に訴えたのは1965年のこと。これまでの年月を振り返れば、やっとここまで来たとの思いがあります。

kanazawa

画像提供:Shutterstock

いま金沢の街は、観光客で連日活況を呈しています。新幹線開業がもたらす効果については、様々な期待をもって語られています。工芸も注目を浴びている分野です。加賀友禅や金箔、九谷焼、輪島塗など、金沢および石川県には多くの伝統工芸が今も根付いています。一部の人のための高額品だけではなく、普段の生活になじむような「生活工芸」と呼ばれる分野を若い人の感性で開拓していこうという動きが見られます。

金沢は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が定める創造都市にも選ばれています。政府が2020年までに訪日観光客2000万人を達成すべく取り組んでいますが、工芸は日本の魅力を海外にアピールするきっかけにもなるはずです。

多方面に及ぶ新幹線効果

企業にも様々な動きが見られます。建設機械大手のコマツは、創業の地である石川県小松市に大型の研修センターを置いています。全国から研修に訪れた社員による宿泊や飲食などで、地元にも経済効果が生まれています。ファスナー大手のYKKは、製造拠点のある富山県黒部市に本社機能の一部を移す計画を進めています。どちらも北陸にゆかりがあるものの、今やグローバルで展開している企業です。

ほかにも、ジャパンディスプレイが1700億円を投じて石川県白山市に工場を建設するほか、航空機に使われる炭素繊維の開発拠点づくりを目指す動きが進んでいます。

こうした動きは新幹線ができたからこそ実現したもので、政府もこうした企業向けに税制を優遇するなどの制度を整えています。

その一方で、新幹線によって首都圏にヒト・モノ・カネが吸い取られる「ストロー現象」が生じるとの懸念があることも事実です。東京の活力を呼び込めるのか、または吸い取られるのか。結果が出るのはまだ先のことです。また、北陸新幹線はこれで完成ではありません。東京―大阪間を北陸経由でつなげるのがそもそもの構想ですから、まだ半分しか達成していないとも言えます。長い目で見ていくことも必要です。

時代が折り重なるバウムクーヘン都市

金沢広告協会・高澤基会長(北國新聞社代表取締役社長)

金沢広告協会・高澤基会長(北國新聞社代表取締役社長)

金沢は歴史と文化を大事にしながら街づくりをしていると言われます。これまで街が空襲で焼かれたり、大きな災害に遭うことが少なかったこともその背景にあります。昔の地図と今の地図を見比べると、当時の道が今もそのまま残っているようなことが少なくありません。古い建物も多く残っています。時代が折り重なっている「バウムクーヘン都市」とも言えるかも知れません。

金沢経済同友会では、地元の人に改めて金沢について知ってもらうことを目的に「金沢検定」を実施しています。今年は新幹線が開通したことを記念し、初めて東京でも試験を行う予定です。

今回の全広連金沢大会では、あまり特別なことをせず、こうしたバックグラウンドを持つ金沢の街を五感で体感していただくことを主眼に置きました。歴史や文化は人が生きていくことの原点にあるものです。いつも近くにあるために、日々の生活で気に留めることは少ないのですが、実はここにしかない貴重なものでもあります。そんなことを金沢で感じ取っていただければ幸いです。

北陸3県には様々な魅力があります。世界農業遺産に登録されている「能登の里山里海」に足を運べば、豊かな自然が今も残っています。ぜひ再びお越しいただきたいと思います。

広告については、北陸3県の新聞やテレビもまだ持ち直しているとは言えない状況です。そもそも、広告は暮らし方を提案していくこと、つまり文化を伝えることが使命であり、それによって消費者の信頼が得られるわけです。我々媒体社も、また広告会社もその原点に立ち返って、さらなる工夫を重ねていくことが必要だと考えています。(談)

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